2011年12月31日土曜日

2005年度 Vol.53-No.3

2005年度<VOL.53 NO.3> 特集:日本のコンテンツ・ビジネス  


12・3・6・9月(年4回)刊
編集 一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社

2005年度<VOL.53 NO.3>
特集:日本のコンテンツ・ビジネス映画、音楽、出版、アニメ。人々が楽しむコンテンツは、経済のソフト化、デジタル化が進むなかで、そのビジネスとしての価値と用途が一段と広がりつつある。時に矛盾しあう芸術とビジネスがどのように結びつき、どう発展していくのか。日本のコンテンツ・ビジネスはどこに向かおうとしているのか、何が課題なのか。経営、産業、制度などの側面から考える。
岸本周平
(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター客員教授)
日本のコンテンツ産業と政策のあり方
 
  アニメやゲームソフトなど日本のソフトパワーは世界市場を席巻している。今ほど日本文化が大衆レベルにおいて海外に浸透している時期はなかったであろう。2004年に出された政府の「新産業創造戦略」では、コンテンツ産業は強い国際競争力を持つ先端的な新産業分野として位置づけられ、さまざまな構造改革を進めていくことが求められている。本稿では、まずコンテンツ産業の中核である映像産業を事例に、寡占的メディアと下請の制作事業者との関係など、その現状と問題点を取り上げ、公正な取引環境を確立するための条件を考える。次に、コンテンツ産業にとって不可欠な著作権に関する諸条約を紹介しつつ、著作権ビジネスをめぐる国際環境を概観する。国益としてのブロードバンド・インターネット時代のメディア戦略を構築し、また、日本の国家としての広報戦略はいかにあるべきかを提起する。
山下 勝
(青山学院大学経営学部助教授)
日本の映画産業の「ダークサイド」―企画志向の座組戦略と信頼志向のチーム戦略の間で
  近年の日本の映画産業は、長い低迷期を乗り越え、再び市場を拡大している。実際に競争力のある映画作品も確かに見られるようになってきた。これは、確立しつつある新しい仕組みが有効に機能しているためであるが、長期的な視点で見た場合には、むしろ大きな不安が残されている。その最たるものは、大手配給会社とマスメディアを持った大企業という一握りの企業群だけが映画産業において成功しているという状況であり、製作現場においても人材育成という大きな不安が残っている。果たして日本の映画産業にとって、その環境に適したよりよい仕組みはどうあるべきか。本稿は、活況の映画産業に隠されたこの「ダークサイド」に光を当て、日本の映画産業の現状をマクロ・ミクロの両視点から詳細に見ていく。
佐藤郁哉
(一橋大学大学院商学研究科教授)
ゲートキーパーとしての出版社と編集者
  インターネットの登場と普及をはじめとするメディア革命にもかかわらず、活字媒体による出版はいまだにきわめて重要な意味を持っている。とりわけ出版社とそこで働く編集者たちは、社会全体に提供される知識や情報の「ゲートキーパー(門衛)」として重要な役割を果たしてきた。本稿では、文化産業一般が抱える「文化と商業」間の対立という問題と、組織原理における「クラフト的側面と官僚制的側面」という対立軸を考慮に入れ、出版社における組織過程と編集者の役割について検討する。出版が将来にわたって質・量ともに豊かなコンテンツを提供する文化生産の場となり、ダイナミックなビジネスとしても成立するためには、どのような文化産業システムが形成されるべきか。米国の出版産業の事例を取り上げつつ、日本の出版業の今後について考える。
米倉誠一郎/生稲史彦
(一橋大学イノベーション研究センター教授/同専任講師)
日本のゲームソフト産業―シリーズ戦略の罠
  ゲームソフトは、それが動作するコンピュータ、家庭用ゲーム機の性能によって提供する娯楽が大きく変化しうるコンテンツである。ゲームソフトが提供する娯楽は、コンピュータ技術の発展に支えられて無限の可能性を秘めている。現実には近年ゲーム産業の産業規模、成長率が最近は落ち込んでいるともいわれているが、この産業の成長プロセスを分析しながら、その特質を明らかにしたうえで、何が起こり、何が起ころうとしているのかを理解しなければならない。ゲームソフト産業はどのような経緯を経て現在の状況に至ったのか。家庭用ゲーム機のライフサイクルを踏まえつつ、人気ゲームソフトのシリーズ化という観点を中心に据え、これまでの歴史を批判的に検討することを通じて、現在生じている問題とその背後で働いていたメカニズムと今後の方向性を探る。
武石 彰/李 京柱
(一橋大学イノベーション研究センター教授/同非常勤研究員)
日本と韓国のモバイル音楽ビジネス―その発展の過程とメカニズム
  音楽業界と情報通信技術革新の間では、新たな「秩序」が姿を現しつつある。なかでも、携帯電話でインターネットからダウンロードして音楽を購入するという「モバイル音楽ビジネス」は巨大な市場となっている。情報通信技術革新が進むなか、音楽ビジネスをめぐって新たにどのような仕組みができ、その背後ではどのようなメカニズムが働いているのか。本稿では、日本と同様にモバイル音楽ビジネスの先進国である韓国を取り上げ、「ビジネス・エコシステム」と「逆突出部」という概念を用いて、その発展プロセスとメカニズムを比較分析しながらたどっていく。コンテンツ・プロバイダと携帯電話キャリア、レコード会社などとの関係、音楽著作権管理制度といった両国の社会的事情などを考えつつ、今後の音楽ビジネスの仕組みや制度革新のための視座を提供する。
野中郁次郎/遠山亮子
(一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授/北陸先端科学技術大学院大学助教授)
フロネシスとしての戦略
  戦略論の研究者たちは経営学を「科学」として発展させてきたが、その一方で戦略は人間によって策定され、実践されるダイナミック・プロセスであるということは忘れられがちであった。人間が主体的に参画する組織的知識創造はいかにあるべきか。本稿では、その解をアリストテレスの実践理性のフロネシスという概念に求めて、知識創造理論と関係づけて展開する。フロネシスとは、価値・倫理についての思慮分別を持って、そのつどのコンテクストや状況において最善の判断と行為ができる実践的知恵(高質の暗黙知)のことをいう。戦略が組織成員によりどのように策定されて実践されるのか。知識創造企業を駆動させる、戦略の実践的・主観的・未来創造的側面を取り込んだ新たな戦略論を構築することを試みる。
●ビジネス・ケース
石倉洋子
(一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)
リコー:デジタル複写機への転換
  長期にわたって増収増益を続けてきたリコーにとって、デジタル複写機の開発と販売は、同社の複写機事業の歴史を振り返るうえで画期的な出来事であった。アナログ複写機全盛の1980年代に、他社に先駆けてデジタル技術へ大きく舵を切るという方向転換はリコーにとって大胆な戦略のシフトであった。いかにしてリコーはこのような大きな転換を成し遂げたのだろうか。本ケースは、デジタル技術の出現が多くの業界にきわめて大きな影響を与え、デジタル化の進展が従来のリーダー企業の競争優位性を喪失させるなか、複写機業界においてこの転換に成功したリコーの歴史と実績を紹介する。
青島矢一
(一橋大学イノベーション研究センター助教授)
テルモ:高機能カテーテル事業の躍進
  1990年代後半以降、テルモの成長を牽引したのが、心臓疾患などの診断や治療に用いられる血管用高機能カテーテル関連の事業であり、同社の売上の20%近くを占めている。1985年に後発メーカーとして高機能カテーテルに参入したテルモは、画期的なガイドワイヤーを中心にして、飛躍的な成長を遂げていく。国内では最大手の総合医療機器メーカーであり、ガイドワイヤーやイントロデューサーでは世界シェア「トップの」テルモではあるが、先端の治療領域では米国大手企業に対して売上面、技術面で後れをとっている。急速な技術進歩と競争が進む世界のカテーテル市場の動向を紹介しつつ、独自に画期的な新製品を生み出していった技術開発の経路をたどりながら、テルモのカテーテル事業の技術戦略・事業戦略の課題を考える。
●コラム連載:もの造りと哲学(3)
 藤本隆宏 「もの造りにおける4要因説」
●連載:経営学のイノベーションム
 長瀬勝彦 「意思決定のマネジメント(5):経験とアナロジーの意思決定」
●マネジメント・フォーラム
 丸山茂雄((株)に・よん・なな・みゅーじっく代表):
       
インタビュアー・米倉誠一郎/武石 彰
 「既得権益をぶっとばせ! 音楽業界に革命を」
●用語解説
 前山政之 「内部統制」
●投稿論文
 坂田一郎/柴田尚樹/小島拓也/梶川裕矢/松島克守
 「地域経済圏の成長にとって最適な地域ネットワークとは
  ―スモールワールド・ネットワークの視点による4地域クラスターの比較分析」



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