2011年12月31日土曜日

2005年度 Vol.53-No.4

2005年度<VOL.53 NO.4> 特集:脱コモディティ戦略 


12・3・6・9月(年4回)刊
編集 一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社

2005年度<VOL.53 NO.4>
特集:脱コモディティ戦略市場・技術の成熟やデジタル化に代表される新しい技術の浸透は、製品やサービスのコモディティ化を加速している。コモディティ化に直面する日本企業は、かつて競争優位を誇っていた分野でも、低コストで勝負する新興企業との競争に苦しんでいる。なぜコモディティ化が起き、また、脱コモディティ化のために企業はどのような戦略をとるべきなのか。本特集では、「脱コモディティ化」をキーワードに、今、日本企業にとって最重要の挑戦課題を深く考察していく。
楠木 建(一橋大学大学院国際企業戦略研究科助教授) 次元の見えない差別化―脱コモディティ化の戦略を考える
 
  戦略の本質は競合他社との「違い」をつくることにある。しかし、製品やサービスで違いを出せなければ、顧客に提示できる違いは価格だけになってしまう。これがコモディティ化である。コモディティ化した業界では、継続的に利益を出せるのは1社に限られ、必然的にそれ以外のほとんどの企業は脱コモディティ化の道を進まざるをえない。まずコモディティ化の本質を見極め、その背後にあるメカニズムを理解しなければならない。ここで鍵となるのが「価値次元の可視性」という視点である。価値次元の可視性とは、製品やサービスの価値を特定少数の次元に基づいて把握できる程度を意味している。本稿は、この切り口からコモディティ化の論理を考察し、そのうえで脱コモディティ化を可能にするいくつかの戦略を提示する。
ジェフリー・L・ファンク(一橋大学イノベーション研究センター教授) 脱コモディティ化と新規産業の創出
  コモディティ化は、特定の製品分野や業界を念頭に置いて議論されることが多いが、脱コモディティ化の究極の形は、新しい産業の創出にあるともいえる。それでは、新規産業が創出する要因はどこに存在するのであろうか。産業形成に立ちはだかる産業自体の複雑さとスタートアップ問題の解決、製品設計ヒエラルキーと顧客選択ヒエラルキー内の製品の進化、既存産業同士の衝突という3つの枠組みから描き出すことで、顧客ニーズを理解し、いかに適切な商品設計を実現していくかを考える。これは、新規産業のみならず既存産業のプレーヤーにも直面する問題である。コンピュータ分野やモバイルインターネットの事例をもとに、経済学の手法を取り入れながら紹介する。
スコット・D・アンソニー(イノサイト社パートナー) 成長の方程式を解く―イノベーションを予見する成功のパターン
  スピード、質、投資の間のトレードオフに満ちた予測できないイノベーション・プロセスを少ない資金でより素早く実行できるようにするにはどうしたらよいのか。また、コモディティ化の亡霊に取りつかれないための方策はどこにあるのだろう。本稿では、企業の成長戦略にとって必要となる思考を「破壊的イノベーション」という切り口で考察する。成長戦略を描くことは、それ自体複雑で不確実な未来を相手にすることだが、成功のパターンを深く理解すれば、成長の方程式に独自の解答を見出すことができる。多くのイノベーションの成功例を調査し、企業の成長戦略で陥りやすい間違いを熟知しているコンサルタントの筆者が、そのステップとシナリオごとに実践的なアドバイスを提示する。
上野正樹(神戸大学経済経営研究所専任講師) モジュラー型製品の二面性―PC産業における製品差異化の戦略
  モジュール化された製品は2つの顔を持っている。部品を組み合わせれば簡単に製品ができてしまう「コモディティ」と、もう1つは最新技術を統合した、部品の組み合わせが難しい「差異化された製品」である。多くの日本企業にとって重要となるのは後者である。本稿ではパソコン産業を題材に、モジュラー型製品の特徴に焦点を当て、モジュール化の背景で劇的な技術変化が進行していること、そして、こうした技術を製品に統合することは困難であり、その統合の力こそが差異化の源泉になっていることを紹介する。デルやパナソニックの事例などを取り上げつつ、モジュール化された製品分野において差異化を実現するための条件と戦略を考える。
藤川佳則(一橋大学大学院国際企業戦略研究科専任講師) 脱コモディティ化のマーケティング
  市場の成熟化と競争激化のなか、コモディティ化の発生ペースはますます加速化し、あらゆる産業がいずれはその大波に飲み込まれてしまうかのような印象さえある。従来の脱コモディティ化の議論では、デジタル化やモジュール化など、技術構造や製品設計の側面から、供給側・企業サイドの論理で説明されることが多かった。それに対して、本稿では、マーケティングの側面から、需要側・顧客サイドの論理に焦点を当てて、脱コモディティ化の可能性を模索する。顧客の潜在ニーズをいかに掘り起こしたらよいのだろうか。その機会について、製品開発、市場導入、関係構築の各段階ごとに考察する。心理学や脳科学などを用いた最新のマーケティング研究の手法や、企業の先進的な取組みを紹介しながら、脱コモディティ化のための示唆を考える。
●ビジネス・ケース
栗林宏行/小野善生(神戸大学大学院経営学研究科修了/滋賀大学経済学部情報管理学科経営情報講座講師)
フェニックス電機:企業再建へのプロセス
  フェニックス電機は、1976年の創業以来ハロゲンランプの製造・販売を中心的な事業として急成長し、1989年には株式上場を果たしたが、1995年11月に事実上倒産するに至った。しかし、その後はまさに社名であるフェニックス(不死鳥)のごとく再建に成功し、プロジェクター用ランプなど高性能ランプの製造メーカーとして、わずか7年後の2002年に再上場を果たすという偉業を成し遂げた。この変革をリードしたのが、大手メーカーを定年退職した元サラリーマンであった。辛抱強いリーダーシップのもとで行われたフェニックス電機の企業再建への軌跡をたどる。
清水洋(ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス博士課程) サウスウエスト航空:ポイント・システムの経営戦略
  サウスウエスト航空は、1967年にダラスにて民間旅客航空会社として設立され、わずか3機のボーイングで就航してから着実に成長し、2004年には417機のボーイングで米国国内の約60都市間を運航している。米国の旅客航空産業は大手航空会社が大きなシェアを占める寡占市場であり、市場自体はそれほど成長していない。2001年9月の同時多発テロ以降は、大手航空会社ですら利益を上げることが難しくなっている。しかしながら、サウスウエスト航空は低価格とユニークなサービスで、顧客に高い満足を与え、30年以上連続で利益を計上している。これは米国の旅客航空産業では類を見ない記録である。この寡占市場に参入したテキサスの小さな航空会社は、どのようにして競争優位を確立していったのだろうか。サウスウエスト航空のビジネスの仕組みとその構築のプロセスを考える。
●コラム連載:もの造りと哲学(4)
 藤本隆宏 「21世紀型もの造りはアリストテレス的転換から」
●連載:経営学のイノベーションム
 長瀬勝彦 「意思決定のマネジメント(6):感情と意思決定」
●マネジメント・フォーラム
 藤巻幸夫((株)セブン&アイ生活デザイン研究所代表取締役社長):
       
インタビュアー・米倉誠一郎
 「スーパーに衣料革命を起こし、日本を格好良くします」
●用語解説
 川口修司 「情報セキュリティ」
●第5回ポーター賞
 大薗恵美(一橋大学大学院国際企業戦略研究科助教授)
 「第5回ポーター賞受賞企業に学ぶ」



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