2011年12月31日土曜日

2006年度 Vol54-No.4

2006年度<VOL.54 NO.4> 特集:サイエンス・イノベーションの時代


12・3・6・9月(年4回)刊
編集 一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社

2006年度<VOL.54 NO.4>
特集:サイエンス・イノベーションの時代創造的なサイエンス上の発見・発明が、各種産業に直結する形でわれわれの社会生活に大きな変革をもたらす傾向が顕著になってきている。本特集では、このような時代を「サイエンス・イノベーションの時代」と呼び、その特性をサイエンス上の発見・発明とビジネスをつなぐ不可欠な要因とは何かという視点から分析・検討する。
廣瀬全孝(産業技術総合研究所 次世代半導体研究センター 研究センター長) 科学的発見・発明とイノベーション―半導体基礎研究・開発の現場から
 
  半導体技術はこの40年近く驚異的な発展を遂げ、社会変革の大きな原動力となってきたが、その技術体系は巨大化・複雑化し、かつ多くの物理的限界に直面している。これを打破して新しい技術体系へと転換を図るためには、もはや自社内だけでは不可能であり、サイエンスからエンジニアリングの領域における産官学の幅広い専門知の融合により、新しいコンセプトの創出・実証に組織的に取り組む必要がある。本稿では、イノベーションをもたらすうえで、社内外の研究開発機能を統合する強いマネジメントの重要性に触れつつ、そのコアとなる探索研究、基礎研究の重要性を説く。
中馬宏之/橋本哲一(一橋大学イノベーション研究センター教授/科学技術政策研究所 客員研究官) ムーアの法則がもたらす複雑性と組織限界―DRAMビジネス盛衰の現代的意義
  テクノロジーとマーケットの複雑性が急増するなか、少なからざる日本のサイエンス型産業は、組織内外にわたるナレッジ結集の仕組みの弱さから、競争力を弱化させつつある。本稿では、そのような事例として、日本の半導体産業が経験したDRAMビジネスの盛衰過程に着目する。半導体産業は、過去40年にわたって「ムーアの法則」に象徴されるテクノロジーの複雑性急増を克服する形で発展してきた。そのなかで日本メーカーは、特に1980年代から90年代初頭に圧倒的な競争優位性を誇ったが、1990年代半ば以降急速に競争力を低下させた。本稿では、5世代にわたる競合各社の量産DRAM解析レポートや過去約30年の研究論文・特許の分析、数年にわたる聞き取り調査に基づいて、日本の半導体産業の競争力低下要因とそれらの克服策を探る。
井上隆秀(カリフォルニア大学CITRIS顧問) 半導体・ITがもたらす新知識社会―急増する水漏れ型クラスタの役割
  半導体が誕生して60年。その間、半導体は自ら技術イノベーションを繰り返しながら、知識社会のイノベーションを支えてきた。知識社会の課題は、医療・安全・教育のような「サービス行為」にある。しかし、半導体とこれら社会イノベーションの間には何層もの仕事・業態・相手が介在する。これら各層に脈絡を与え、半導体から社会の課題までのサプライチェーンを回すには、多様な発想を持つ人々が自らの枠を超え、連帯して知識社会の将来像に対する集合知を造り上げ、実現に挑戦していく必要がある。本稿では、そうした知識と作業交流の場として、水漏れクラスタ型社会の重要性を提起し、カリフォルニア大学の産官学参加による研究機構CITRISの試みを事例として紹介する。
小田切宏之(一橋大学大学院経済学研究科教授) オープン&クローズド・サイエンスの共存を求めて―「全国イノベーション調査」の含意
  基礎研究と応用・開発が対立する概念として考えられる線型モデルでは、一方で、オープンサイエンスを基本とする基礎研究、他方で、知的財産権によるインセンティブ効果を重視することによってクローズドサイエンスを基本とする応用・開発研究と整理することができた。しかし、医薬・バイオテクノロジーに代表されるような根源的理解の探求と実用化とを同時に追求するような分野(パスツール象限という)では、オープンサイエンスとクローズドサイエンスのいずれもが重要である。本稿では、文部科学省科学技術政策研究所が実施した「全国イノベーション調査」の結果を引用しつつ、オープンサイエンスとクローズドサイエンスをバランスよく共存させるべきことを論じる。
黒田孝二(大日本印刷 技術開発センター 生産総合研究所 主席研究員) 感性とサイエンスのハーモニー―21世紀のモノづくり像を求めて
  カラー印刷を拡大すると、黄、赤、藍、黒の細かなドットが無数に見えてくる。インキが版から紙に移ってこのドットができるのは1000分の1秒以下と速く、とても人の目には止まらないが、熟練者はその感性と経験からこれを操る。日本の産業には、現場のモノづくり感性に支えられた技術が数多くあるが、あまりに複雑すぎて、今の科学では解明できず潜在化している実情がある。本稿では、印刷現場の熟練者の感性をモデルに動的計測技術を開発、現場の複雑な材料の動きをナノレベルから一目瞭然にする活動に取り組み、現場のコミュニケーション効率を飛躍的に向上させた試みを紹介する。サイエンスと感性の相互補完による、21世紀のサイエンスのあり方と、ナノテクノロジーの宝庫である日本企業のモノづくりのあり方を問う。
齋藤旬/久武昌人(ニコン コアテクノロジーセンター 主席研究員/経済産業研究所 コンサルティングフェロー) 「イノベーション」に不可欠な制度―「パートナーシップ」のための会計・税制
  イノベーションの主役は、19世紀後半の大発明家、20世紀半ばの大企業研究所を経て、欧米ではLLC(有限責任会社)をはじめとする新会社組織形態へと替わりつつある。これは株式会社とは全く違う「パートナーシップ」という会社組織形態である。日本では近年、テクノロジーの複雑性が増大することで、資金調達がますます困難となっているが、欧米ではこの組織をうまく利用し、社会にとって有用なイノベーションを次々と実現している。本稿では、半導体製造装置の1つである露光装置のビジネスを事例として、イノベーションを実現し、ひいては経済の活性化を生み出すための不可欠な会社制度として、パートナーシップの会計と税制について紹介する。
●ビジネス・ケース
藤川佳則/吉川恵美子(一橋大学大学院国際企業戦略研究科専任講師/一橋大学大学院国際企業戦略研究科修士課程修了)
ブックオフコーポレーション:中古品ビジネスにおけるサービスイノベーション
  市場規模の停滞や倒産件数の増加が続く書籍関連業界において、ブックオフコーポレーションは、「中古本のコンビ二エンスストア」をサービスコンセプトに、中古書店チェーンを全国展開し、大きな成長を遂げた。近年は、非書籍中古品の販売、複合店の展開など多角化を進めるほか、海外市場にも展開しつつある。本稿では、ブックオフの国内市場における圧倒的な市場地位の確立に至る足跡をたどり、今後のブックオフの持続的な成長の可能性についてサービスマネジメントの視点から考える。
島貫智行(一橋大学大学院商学研究科博士後期課程) ニチレイ:事業戦略の転換と人材マネジメントの変革
  冷凍食品業界のリーディングカンパニーとして知られるニチレイは、1990年代後半に市場の構造変化や収益性の低下に直面し、事業戦略を大きく転換した。冷凍食品事業や低温物流事業の高付加価値化や組織構造の見直し、人材マネジメントの変革を次々と実行し、収益力改善と業績回復に成功した。本稿では、人材マネジメントの変革に焦点を当てて紹介する。ニチレイは新たな事業戦略を実現するために、「企業内プロフェッショナル」という求める人材像を設定し、人材登用や賃金体系、キャリア開発などの整合性をとりながら、「FFプログラム」と呼ばれる人材マネジメント・システムを設計し、実行した。企業の戦略達成に貢献する人材マネジメントの一事例として、ニチレイの変革プロセスをたどる。
●コラム連載:ネクサス―知識と企業者と市場の間(4)
 今井賢一 「これまでの議論はどのように関係するのか」
●連載:経営学のイノベーションム
 西口敏宏 「ネットワーク思考のすすめ(4):信頼とソーシャル・キャピタル」
●マネジメント・フォーラム
 立川敬二(宇宙航空研究開発機構理事長):
       
インタビュアー・米倉誠一郎
 「宇宙航空分野で研究開発を推進し、最先端のイノベーションを目指します」
●用語解説
 ディミトリ・リティシェフ 「仮想経済圏」
●ポーター賞
 大薗恵美 「第6回 ポーター賞受賞企業に学ぶ」



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