2011年12月31日土曜日

2007年度 Vol55-No.3

2007年度<VOL.55 NO.3> 特集:日本の雇用――新しい現実  


12・3・6・9月(年4回)刊
編集 一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社

2007年度<VOL.55 NO.3>
特集:日本の雇用――新しい現実バブル崩壊後の長期低迷から抜け出し、日本経済は上昇基調にある。しかし、従来の日本型雇用システムを見直し、業績改善を目指して行われた「人」にかかわる制度改革の副作用も見られる。本特集では、若年雇用、高齢者雇用、非正規雇用、転職市場など、さまざまな側面から雇用の実態を明らかにし、企業や産業の競争力に与える影響を分析する。
八代尚宏(国際基督教大学教養学部教授) 日本の労働市場改革の方向性
 
  日本の雇用をめぐる経済社会環境は、1990年代以降大きく変化している。にもかかわらず、過去の高い経済成長を前提として成立してきた長期雇用保障や年功賃金などの日本的雇用制度・慣行が「良い働き方」とされ、それ以外の多様な働き方を排除しようとする制度が維持されている。実はこれが現在の雇用問題の大きな要因となっている。こうした問題の抜本的な解決のためには、過去の労働市場の制度改革の遅れを取り戻す「労働市場ビッグバン」が必要とされている。本稿では、日本的雇用制度・慣行の合理的な面とともにマイナス面を検討し、今後、高齢化が進み、高い成長が期待できない日本にとって、より開かれた労働市場での多様な働き方とルール作りについて提言する。
玄田有史(東京大学社会科学研究所教授) 若年雇用の新たな「内部化」
  失業、フリーター、ニートなど、若者の雇用問題について、多様な観点からの論議がなされ、社会的関心事となっている。今後、高齢化社会における日本経済の持続的な成長を考えるにあたって、非正規雇用の若者に対して、就業や能力開発の機会をいかにして安定的に確保していけばよいのだろうか。本稿では、そうした若者たちの雇用状況を考えるにあたり、「フリーターの内部化」という新しい若年処遇の取組みを中心に、各種データなどが語る事実をたどり、不況期から好況期に移行する現在、若者の雇用に何が起こりつつあるのかを実証する。そして、若者だけでなく、採用する側の企業の経営者のあり方を提言する。
大久保幸夫(リクルート ワークス研究所所長) 転職の常識は本当か
  新卒一括採用が浸透している日本社会だが、実際に定年退職まで1つの企業で働き続ける人は少数派である。平均勤続年数12年という数字が示すとおり、多くの個人は転職を経験することになる。また企業経営においても、即戦力を求める中途採用は、変化の激しい経済環境のなかで欠かせない採用手法になりつつある。しかし、一般にいわれる「人材の流動化」という言葉ほどには、簡単に転職するように変化したとは言いがたいし、転職にまつわるさまざまな「常識」も、必ずしも信用に値するものではない。そこで本稿では、転職に関する全体像を統計数字をもとに概観するとともに、転職に関して広く信じられている「常識」について事実かどうか改めて検証してみたい。
大橋勇雄(一橋大学大学院経済学研究科教授) 高齢者は何を望んでいるのか―「高齢者就業実態調査」より
  人口の高齢化は、社会経済にさまざまな形で影響する。特に年金や医療などの問題では、若年者に負担を強いるばかりではなく、高い経済成長を実現するために必要な資源をも消失させる。こうした状況に対応するには、日本では高齢者の就業をいっそう促進し、平均的に今後70歳程度までは働かなければならない時代になりつつある。そのとき、多くの高齢者は働くことに対して、何を望んでいるのだろうか。満足のできる働き方のためには何が必要であり、何が障害になっているのか。本稿では、厚生労働省の『高年齢者就業実態調査』をもとに、高齢者の就業状態や家庭環境、年金、稼得収入、就業希望などの経済状況に関して幅広く分析することで、高齢者の雇用問題を探っていく。
中馬宏之/川口大司(一橋大学イノベーション研究センター教授/一橋大学大学院経済学研究科准教授) 生産情報システムは雇用の非典型化を促すか
  日本の生産職場では、新しい実行系の生産情報システムの活用が本格化している。その結果、生産状況が一目瞭然化し、作業の細分化・標準化などが可能となり、正社員技能工から派遣労働者・業務請負工に仕事が移行し始めている。しかし、もの造りのパフォーマンスを考えるうえで、細分化された現場では、全体最適よりも部分最適に流れがちになってしまう。このなかで、いかに生産管理をし、労働者をマネジメントしていくべきか。本稿では、日本の電機産業を代表する企業の生産職場に対して実施された電機連合の『製造現場監督者の人材育成に関する調査』に基づき、業務請負工を積極活用する戦略と高度な生産情報システム導入戦略との代替・補完性について、統計学的な視点から検討する。
●特別寄稿野中郁次郎/平田透/遠山亮子(一橋大学名誉教授/金沢大学経済学部教授/北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科准教授) 「流れ」を経営する―知識ベース企業のプロセス理論序説
  従来の経営学における諸理論の主流は、企業の優位性を物的経営資源、いわば「モノ」に求める理論であった。しかし、その偏重により、経営の主体である人間の主観や「どう生きるか」という価値観を軽視する傾向があった。企業や人間のダイナミズムを把握するには、モノそのものではなく、変化する状態(プロセス)を「コト」として、現実の世界を捉える必要がある。本稿では、この視点をホワイトヘッドのプロセス哲学に求め、知識創造理論を進化させた知識ベースの経営理論を提示する。そして、日本企業の数社の事例を挙げながら、その優位性は「コト」発想の優れたプロセス・マネジメントにあると説く。
●ビジネス・ケース
武石彰/伊藤誠悟(一橋大学イノベーション研究センター教授/一橋大学大学院商学研究科博士後期課程)
東芝:自動車エンジン制御用マイコンの開発
  1970年代半ば、米国では悪化する大気汚染への対策として、自動車のエンジン制御にマイコンが本格的に使われ始めた。なかでも、フォードが発売したリンカーン・ベルサイユでは、点火時期と排ガス還流の両方を制御する画期的なマイコンが搭載された。このマイコンを開発したのが、東芝であった。これは自動車へのマイコンの本格的応用の幕開けを飾る革新であり、東芝の自動車向け半導体ビジネスの発展の礎となるものであった。処理能力、サイズ、耐久性、価格のいずれの面でも時代の最先端のシステムであった。本ケースでは、東芝が世界に先駆けてこのマイコンを開発・実用化していったプロセスをたどる。
江夏幾多郎(一橋大学大学院商学研究科博士後期課程) ヤマト運輸:「現場の経営者」が支える競争力と彼らへの人材マネジメント
  1976年に個人向け宅配便事業に特化した「宅急便」に乗り出してから30年余。ヤマト運輸は現在、業界内でトップシェアを保ち続けており、日常生活に欠かせない公共的・社会的なインフラとなっている。このサービスを享受できるのは、全国均一の高密度なネットワークとともに、ネットワークを体現するセールスドライバー(SD)が、荷物を媒介にして顧客との対面の場に存在するからである。本稿では、「現場の経営者」であるSDをヤマト運輸が競争力の源泉として重視し、彼らがよりよいサービスを提供できるために、彼ら自身や会社がどのような取組みを行ってきたのか、そのビジネスモデルや人材マネジメントについて紹介する。
●コラム連載:遺稿・21世紀への歴史的教訓(3)
 アルフレッド・D・チャンドラーJr. 「複数事業部制というイノベーション」
●連載:経営学のイノベーションム
 西口敏宏 「ネットワーク思考のすすめ(7):社会システムの循環形式」
●マネジメント・フォーラム
 安部修仁(株式会社吉野家ホールディングス代表取締役社長):
       
インタビュアー・米倉誠一郎
 「働く人1人ひとりの役割を大切にし、「日々の改善」による価値を追求します」
●用語解説
 円谷昭一 「会計基準のコンバージェンス」
●投稿論文
 記虎優子 「企業の社会責任活動がコーポレート・レピュテーションに与える影響―社会・環境情報開示と企業社会業績(CSP)に着目して」



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