2011年12月31日土曜日

2008年度 Vol.56-No.2

2008年度<VOL.56 NO.2> 特集:日本経営学の最前線Ⅲ――日本発ものづくり経営学




12・3・6・9月(年4回)刊
編集 一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社

2008年度<VOL.56 NO.2>
特集:日本経営学の最前線Ⅲ――日本発ものづくり経営学2003年度から文部科学省21世紀COE(Center of Excellence)プログラムとして、一橋大学、神戸大学、東京大学が経営学分野における研究重要拠点として選ばれ、5年間の研究プログラムがスタートした。今号は、シリーズ第3弾(最終回)として、東京大学大学院経済学研究科ものづくり経営研究センターを取り上げる。設計論や組織能力論に立脚した広義の「ものづくり」概念による、製造業や生産現場の境界を超えた日本発・現場発の経営学を紹介する。
呉在恒/橋本規之/和田剛明(明治大学国際日本学部准教授/信州大学イノベーション研究・支援センター研究員/東京大学大学院経済学研究科特任研究員) 統合型ものづくりシステムの一般体系化
 
  日本の競争優位の源泉はものづくりであり、また、日本の強みは現場にあるとよくいわれている。しかし、日本企業のものづくりシステムは本当のところどうなっているのか。また、統合型ものづくりシステムやその組織能力は、さまざまな産業・企業にどれほど導入・浸透しているのか。本稿では、自動車、電機・電子、プロセスなどの産業に属する優良企業17社とものづくり経営研究センターとの共同研究(ものづくりコンソーシアム)の成果を紹介する。統合型ものづくりの組織能力は、理念型としては、トヨタ生産システムなどを中心に、比較的に明確化してきた。しかし、その導入・浸透状況についての産業・企業間比較分析は意外に少ない。本稿は、産学協同のもと、各社の現場の地道な実態調査をベースにし、統合型ものづくりの組織ルーチンの体系的比較分析を試みた探索的論文である。
具承桓/小菅竜介/佐藤秀典/松尾隆(京都産業大学大学院マネジメント研究科准教授/東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員/東京大学大学院経済学研究科博士課程/首都大学東京都市教養学部経営学系准教授) ものづくり概念のサービス業への適用
  現代経済におけるサービス業の比重はますます高まっている。しかし、生産性およびその向上率を製造業と比較すると、製造業のほうが圧倒的に高い。そのため、サービス業の組織能力と競争力の向上が日本経済の重要課題の1つといわれている。では、この課題にどのように対応すればよいのか。その方策の1つが、サービス業が「ものづくり」視点を持つということである。それでは、ものづくりとしてのサービス業とは何か。サービスをものづくり的に考えれば、それは設計情報の発信装置を配置したシステムであり、そのシステムを使って、顧客に設計情報を転写することである。本稿では、こうした発想を実際に導入してサービスシステムを改善している病院業、保険業、小売業、自動車販売業の事例を紹介し、ものづくりアプローチがサービス業の改善に果たす意義を分析する。
新宅純二郎/立本博文/善本哲夫/富田純一/朴英元(東京大学大学院経済学研究科准教授/立命館大学イノベーション・マネジメント研究センター客員研究員/立命館大学経営学部准教授/東洋大学経営学部専任講師/東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員) 製品アーキテクチャから見る技術伝播と国際分業
  1980年代末から日本が技術開発の先頭に立って世界をリードしてきた液晶パネル、光ディスクドライブ、半導体など、最先端のテクノロジーが求められる産業では、日本企業は繁栄を十分に謳歌できたわけではなかった。近年、韓国、台湾、中国などの新興国企業に急速にキャッチアップされ、生産販売量で日本企業が後塵を拝する例も見られる。一方で、自動車など成熟した技術の産業、液晶用の部材や製造装置では、こうした動きはさほど見られない。なぜこのような技術伝播の速度に違いが出てくるのだろうか。本稿では、モジュラー(組み合わせ)型とインテグラル(擦り合わせ)型という製品設計の基本思想(アーキテクチャ)による視点に基づいてこのメカニズムを分析する。そして、この技術伝播の分析をもとに、今後の国際分業とアライアンスの可能性について考える。
天野倫文/中川功一/大木清弘(東京大学大学院経済学研究科准教授/駒澤大学経営学部専任講師/東京大学大学院経済学研究科博士課程) グローバル戦略の組織統合と経営革新―HDD産業に見る経営改革の比較
  近年のグローバル競争は、海外投資を通じて新興・成長地域に事業範囲を拡張する段階から分散化した企業システムを統合し、機動的に組織を運営する能力を多国籍企業がいかに備えるかという段階に移行しつつある。グローバル戦略の究極の目的は、多様な構造変動と激しい国際競争に耐えうる多国籍企業システムを長期的に開発することであり、そのような観点から個々の戦略を評価する必要がある。本稿では、多国籍企業の組織能力を中心的なテーマとし、グローバル戦略と組織能力開発の関係性について、HDD産業の近年の経営改革を比較分析しながら検討する。
貴志奈央子/高橋伸夫(明治学院大学経済学部経営学科専任講師/東京大学大学院経済学研究科教授) ライセンシング戦略と非内発型発明
  発明、特許というと、科学的・技術的な側面が前面に出てくることが多いが、特許の取得は発明をビジネスとして扱う行為である。一方、特許権だけで競争優位性を守ることは難しい。では、企業はいったいどんなときに発明を行い、特許を出願するのだろうか。本稿では、従来のようにナイーブに研究開発の成果としてイメージされている発明を「内発型」の発明、それとは別の要因や文脈で行われていると考えられる発明を「非内発型」の発明と定義し、企業による特許の取得が内発型の発明にとどまらないことを明らかにする。本稿の目的は、いわゆる発明全般から内発型の発明を分離し、残った非内発型の発明に焦点を当てることで、科学的・技術的視点とは全く異なる視点、「ライセンス・ビジネス」あるいは「ライセンシング・ビジネス」といった視点からの分析が、発明、特許出願といった企業行動をより自然に説明できると示すことにある。
藤本隆宏/大隈慎吾/渡邊泰典(東京大学大学院経済学研究科教授/九州大学大学院総合理工学府博士課程/東京大学大学院経済学研究科特任研究員) 人工物の複雑化と産業競争力
  近年、製品、工程、事業システムなど、人間が設計する人工物には、機能の多様化、精度の向上、部品点数の増加といった複雑化の傾向が顕著である。その背景には、環境・エネルギー・安全性などに関する規制の厳格化というビジネス環境要因や、洗練化・軽量化・多機能化などに対する顧客要求の増大という市場要因が挙げられる。本稿では、こうした「人工物の複雑化」の時代において、人工物とは設計情報が媒体へ転写されたものであるという観点から、その具現化する特性が設計時に意図されたものであるとし、設計者がどう対応しているかを分析する。21世紀という「制約の厳しいグローバル化」の時代において、日本企業は人工物が複雑化するなか、その産業競争力を維持することができるだろうか。経済学や工学的視点を交えつつ、複雑化する人工物への企業・現場・社会の対応戦略を考える。
野中郁次郎/紺野登(一橋大学名誉教授/KIRO代表兼多摩大学大学院教授) 戦略への物語アプローチ
  米国流の市場や資源の客観的分析をベースとした戦略論からは、「自分は何か」「どう生きたいか」という戦略策定・実践の主体の価値や倫理は出てこない。戦略は、現実を解釈し、新たな現実を社会的に創造し続ける知力である。人間は、戦略の実現に向けて思索・予測・行動・修正を反復しつつ環境を変えていくが、その環境は客観的には存在していない。組織は単に環境に適応するのではなく、われわれ人間が主観的なフレームワークによって環境を解釈し、創造しているのである。近年の戦略論はハウツーに偏り、人間存在に対する明快な理論的背景や概念を欠いている。知識とは、個人の信念・思いを「真理」に向かって社会的に正当化していくダイナミックな未来創造プロセスなのである。本稿では、個や組織の主観的要素を基点にした「創造」的戦略の方法論として、「物語アプローチ」について論じる。
●ビジネス・ケース
武石彰/宮原諄二/三木朋乃(京都大学大学院経済学研究科教授/東京理科大学大学院総合科学技術経営研究科教授/一橋大学大学院商学研究科特任講師(ジュニアフェロー))
富士フイルム:デジタルX線画像診断システムの開発
  X線画像診断システムとは、健康診断などでなじみのあるレントゲン画像撮影装置のことである。デジタル式は、X線情報をレントゲンフィルムに感光させるのではなく、センサーとコンピュータによってデジタル情報に変換し、写真フィルムや液晶モニターなどに画像を表示する。画像処理を施すことで診断目的にあわせた画像情報が提供できるところなどに特長があり、世界中の医療機関に浸透し、医療の質の向上・高度化・効率化に貢献している。このシステムを世界に先駆けて開発したのが、富士フイルムである。同社が1981年に発表したFCRは、X線画像情報のデジタル化に世界で初めて成功した画期的な技術革新であった。レントゲンフィルムの大手だった同社は、FCRで医療機器システム事業に本格的に参入し、現在、デジタルX線画像診断システムの分野で世界トップの座を占めている。本ケースでは、同社の優れた技術者たちがFCRの開発・事業化に果敢に取り組んでいったプロセスをたどる。
●ビジネス・ケース
安田隆二/川田英樹(一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授/一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程)
りそなホールディングス(2):リストラから持続的成長への転換の模索
  2003年5月、経営破綻を避けるべく、約2兆円の公的資金により準国有化されたりそなホールディングスは、細谷英二会長の強力なリーダーシップのもと、2年後の2005年にはリストラによるV字回復を達成した。今号では、2005年から2007年にかけて実行された再生から飛躍に向けた第2段階であるコスト・リストラから持続的成長へ向けた経営転換のプロセスを描く。第1段階の成功が、古い銀行モデル・文化への回帰をもたらしかねない危機のなか、細谷が独自の「りそなウェイ」をめざして変革に取り組んだ姿をたどる。
●コラム連載:遺稿・21世紀への歴史的教訓(6)
 アルフレッド・D・チャンドラーJr. 「家庭用エレクトロニクス産業の覇者―松下とソニー(1)」
●連載:経営学のイノベーション
 楠木建 「競争戦略の基本論理」
●マネジメント・フォーラム
 中鉢良治(ソニー株式会社代表執行役社長):
       
インタビュアー・米倉誠一郎
 「脇目も振らずに技術を磨き、「ソニーらしい」ものづくりを追求します」
●用語解説
 鈴木竜太 「メンタリング」
●投稿論文
 中川功一 「システミック/イノベーションに対するコンポーネントメーカーの事業戦略―TDKのHDD用磁気ヘッド事業の事例分析より」



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