2011年12月31日土曜日

2008年度 Vol56-No.3

2008年度<VOL.56 NO.3> 特集:M&Aと企業価値  

12・3・6・9月(年4回)刊
編集 一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社

2008年度<VOL.56 NO.3>
特集:M&Aと企業価値産業構造が大きな転換点を迎えるなかで、世界規模での企業再編の流れが加速している。日本企業も例外ではなく、さらなる競争力向上の手段として、あるいはグローバル展開を戦略的に実践していくための手段として、M&Aを活用するケースが増えている。しかしながら、実際にM&Aを企業価値創造や持続的な競争力の向上に結びつけることができているケースはそれほど多くはない。本特集では、日本企業がM&Aを活用し、成長機会を柔軟に捉えるため、あるいは持続的に企業価値創造を実現していくために何が必要となるかについて多面的に検討していく。
伊藤邦雄/加賀谷哲之(一橋大学大学院商学研究科教授/一橋大学大学院商学研究科准教授) 企業価値を創造するインタンジブル統合
 
  本稿では、企業がM&Aを行う主たるねらいの1つとして位置づけられる無形資産ないしはインタンジブルの取得をいかに企業価値創造に結びつけていくべきかについて検討することをねらいとしている。近年では、日本企業によるM&A取引も増加しつつあり、それに伴い、日本企業によるM&Aが企業価値に与える影響も検証されつつあるが、企業価値の決定因子として注目されつつある無形資産ないしはインタンジブルとM&Aの関連性について検討した研究は皆無であった。本稿では、大量サンプルを活用した統計的な解析とケーススタディを組み合わせ、M&Aを通じて獲得した無形資産やインタンジブルを企業価値に結びつけるにあたって、理念・ビジョンの浸透、ビジネスモデルや戦略、経営目標・計画達成にかかわる実行力が重要な役割を果たしていることを論証する。
服部暢達(一橋大学大学院国際企業戦略研究科客員教授) M&A成功の条件:日本企業によるアウトバウンド案件を中心に
  2008年に入り、世界のM&A市場は世界的な金融不況のあおりを受けて減速しているが、事業会社による戦略的案件はそれほど少なくなっているわけではない。日本を含む世界中で、株主価値の持続的な成長をめざす企業経営者にとっては、今後もM&Aが重要な選択肢として定着するだろう。特に最近では、日本企業による外国企業の買収(アウトバウンドM&A)が過去最高のペースで起きている。しかし、過去の日本企業は外国企業の買収の際には、高く買いすぎて失敗したケースが多かったようである。本稿では、アウトバウンドM&Aにフォーカスを当て、買収プレミアムを切り口に、日本企業が陥りやすい取引上での罠を明らかにしたうえで、アウトバウンドM&Aを成功させるための5つの条件について提示する。
矢部謙介(名古屋商科大学会計ファイナンス学部准教授) グループ企業再編の役割と財務業績への影響
  日本におけるグループマネジメントが大きな進展を見せている。純粋持株会社制の解禁と、連結決算中心主義への移行に始まる連結会計改革を経て、今や、企業経営・企業評価の基本単位は連結がベースであり、親会社単独の経営・業績を中心とした考え方は少数派となった。このような状況下で、日本企業によって行われてきた企業再編はグループマネジメントという視点においてどのような意味を持っているのか。そして、グループマネジメントを強化するうえで重要な役割を担っている完全子会社化や事業譲渡といった企業再編を行った企業は、その実施後に財務業績を伸ばすことができたのだろうか。本稿では、ケーススタディと財務業績向上効果に関する実証的分析を通じて、グループマネジメントにおいてM&Aを活用する意義と、企業価値創造との関係を探っていく。
岩倉正和(西村あさひ法律事務所 パートナー) M&Aにおいて企業価値を高めるための取締役の法的責任・行動準則
  これまで多くの日本企業は、M&Aを敵対的買収から防衛すべきものと「後ろ向き」に捉える傾向が強かった。しかしながら、会社法や裁判例の進展により、日本にもグローバルマーケットにおけるルールが浸透していくなかで、こうした議論の意義は低下しており、むしろデメリットが大きくなっている。一方、株主にとっての利益をいかに高めるかという、取締役の善管注意義務・忠実義務によるより一般的・普遍的な取締役の責任という観点からの議論がより重要になりつつある。本稿では、「防衛すべきもの」から「株主の利益から肯定的に捉えるもの」というM&Aに対する発想の転換そのものが、企業価値創造の第一歩となることを論証し、今後のわが国マーケットにおいて企業経営者に対して求められること、とりわけ、M&Aに関連して要請されることについて考える。
蟻川靖浩/宮島英昭(早稲田大学大学院ファイナンス研究科准教授/早稲田大学商学学術院准教授) どのような企業がM&Aを選択するのか:企業統治と組織構造
  近年のM&Aブームの重要な特徴は、企業がM&Aを成長戦略の一部として位置づけたこと、また、M&Aが成熟企業の事業ポートフォリオの組替えの手法としても利用され始めたことにある。では、どのような企業がこうしたM&A戦略の採用に積極的なのか。本稿ではこの問題を、企業の統治構造や組織構造の差に焦点をあててシステマチックに分析する。対象期間は、今回のM&Aブームのピークにあたる2005~07年とし、東証1・2部上場の非金融事業法人の企業買収・資産取得の選択の決定要因を推計した。その結果、キャッシュフロー保有の多寡、経営者の株式保有、機関投資家の保有比率、取締役会の構成、持株会社形態の採用の有無が企業のM&Aの選択に有意な影響を与えることが明らかとなった。
●ビジネス・ケース
藤川佳則 /鈴木謙一 /フレデリック・ディトレフ・オッテ・トロエル(一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授/一橋大学大学院国際企業戦略研究科修士課程修了/一橋大学大学院国際企業戦略研究科修士課程修了)
公文教育研究会:インドにおける理念主導型サービス・グローバル戦略の展開
  公文式は自学自習で教材に取り組むことにより、基礎学力を身につけていく学習法である。1955年に公文公が算数教材を扱う教室を創設し、公文教育研究会が設立された。同社はフランチャイズ制度のもと、日本全国への教室展開を行っていったが、1970年代からは海外進出を積極的に開始した。現在、世界45の国と地域に教室を展開し、世界中で400万人以上が公文式を学習している。創業以来、「子どもたちのために」をはじめとするミッション、ビジョン、バリューを大切にしてきた同社ではあるが、グローバルな知識共有とその蓄積を活用して、2005年よりインドでの事業展開が始まった。教育制度や文化の全く異なるインドにおいて、同社海外法人の最年少社長(当時)のリーダーシップのもと、どのようにそれらの壁を乗り越え、人材開発を行ってきたのか。本稿では、同社のインドでの事業展開の経緯をたどり、同社がめざす理念主導型グローバル戦略の視点から、今後の課題や展望を探る。
●ビジネス・ケース
鈴木修(関西学院大学大学院経営戦略研究科准教授)
シチズン時計:電波腕時計の開発・事業化過程
  2003年に発売されたシチズン時計のフルメタル電波腕時計は「クオーツ以来のイノベーション」といわれている。同社製品の平均単価を2割以上上昇させて業績を牽引する主力商品となっただけではなく、スイス勢を中心とする高級腕時計に席捲されていた国内の腕時計産業全体の活性化にもつながったからである。しかし、その製品開発、そして事業化の道のりは決して平坦なものではなかった。技術面では、金属ケースのなかでも電波をキャッチできる高精度・小型のアンテナ開発が大きな課題であった。さらに電波腕時計の普及に欠かせない標準電波送信インフラが未整備であったうえに、腕時計自体ではなく、インフラ側で精度を担保する電波腕時計は、競合他社はもちろん、シチズン時計社内でも腕時計の常識に反すると見られており、組織内での合意形成も必要であった。本ケースでは同社の電波腕時計の事業化と市場形成について、国内ライバル社の動きと比較しつつ、その足跡をたどる。
●技術経営のリーダーたち(1)
吉田守(パナソニック株式会社 AVCネットワークス社 副社長)
「写真文化に真正面から取り組み、LUMIXを大成功に導いたリーダー」
●コラム連載:遺稿・21世紀への歴史的教訓(7)
 アルフレッド・D・チャンドラーJr. 「家庭用エレクトロニクス産業の覇者―松下とソニー(2)」
●連載:経営学のイノベーション
 楠木建 「静止画から動画へ」
●マネジメント・フォーラム
 佐山展生(GCAサヴィアングループ株式会社取締役):
       
インタビュアー・米倉誠一郎
 「顧客本位を徹底したM&Aアドバイザーとして、日本企業に活力をもたらします」
●用語解説
 菅野寛 「オペレーション・マネジメント」
●投稿論文
 柴田友厚 「技術選択のジレンマのマネジメント:並行開発体制の構築」



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