2011年12月31日土曜日

2010年度 Vol.58-No.2

2010年度<VOL.58 NO.2> 特集:検証・日本の競争力 


12・3・6・9月(年4回)刊
編集 一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社

2010年度<VOL.58 NO.2>
特集:検証・日本の競争力2000年に新創刊した本誌は、この10年間の激しい変化のなかで、日本のマネジメントをさまざまな角度から分析してきた。その背後には1つの共通する問題意識が常にあった。それは、日本企業の競争力である。日本企業の競争力の低下の真の原因はどこにあるのだろうか。競争力回復のためのカギはどこにあるのだろうか。10周年記念特大号となる本特集では、それらの問題を考えるための材料を提供する。
米倉誠一郎/延岡健太郎/青島矢一(一橋大学イノベーション研究センター長・教授/同センター教授/同センター准教授) 検証・日本企業の競争力:失われない10年に向けて
 
  「いざなぎ超え」といわれた2000年代の長期にわたる好況期、日本の製造企業は、営業利益率を大幅に増大させた。しかし、その一方で、付加価値率は急落していた。目先のコストカットで利益を捻出することに注力するなか、日本の製造企業は、ものづくりによって経済的な価値を創出することができなくなっているのだ。しかし、日本の製造業の総合的なものづくり能力が、大きく後退しているわけではない。問題は、高いものづくり能力を経済価値(付加価値)に変換する能力が欠如していることにある。だがこうした状況にあっても、本稿で明らかにするように、いくつかの企業は、顧客価値の創出や新たなビジネスモデルの構築に成功している。
青木周平(一橋大学イノベーション研究センター助手) 現代のマクロ経済理論から見た日本経済の成長と停滞の原因
  日本経済は、第2次世界大戦後、1970年代前半までに高度経済成長を達成した。しかし1990年代以降、一転して「失われた10年」とも「失われた20年」ともいわれる停滞を、今日に至るまで経験し続けている。戦後日本の成長と停滞の原因はいったい何なのだろうか。本稿は、この問題に関する近年のマクロ経済学における研究成果を、理論的な観点から整理し紹介する。そして、日本の成長と停滞の原因を理解するカギは、TFPと呼ばれる概念にあることを明らかにする。しかしながら、TFPとは何かについては、いくつかの理論仮説が提案されているものの、それぞれの仮説には解明すべき課題が残っており、今なお未解決の問題として残っていることを、さらに説明していく。
パトリック・ラインメラ/マーク・バーイ(グランフィールド大学教授/エラスムス大学ロッテルダム校准教授) 「失われた20年」を超えて:国際競争における日本企業のプレゼンス・パフォーマンス分析
  日本企業の国際競争力の低下は、近年数多く指摘されている。本稿は、過去50年間にわたるフォーチュン・グローバル500の分析を通じて、国際競争力の変化と持続性を明らかにした上で、日本企業の1980年代以降の台頭、および1990年代後半以降の低迷を検証している。これらの分析は、日本企業のプレゼンスは低下しつつあるものの、依然として、自動車、電機産業など競争優位を維持することが困難な産業に投資してきたことによって、日本企業の総体的なパフォーマンスは過去20年間向上し続けてきたことを明らかにしている。この分析結果は、企業が競争優位を獲得するためには、自社にとって優位な環境を活用するだけでなく、新たな市場の開拓や新製品開発などの企業家行動が必要不可欠であることを示している。
清水 洋(一橋大学イノベーション研究センター専任講師) 日本の科学技術:研究開発の効率性と資源配分
  製品とサービスの高付加価値化は日本企業にとって避けて通れない。科学技術力は、そこでの重要な基盤の1つである。本稿は、日本企業の研究開発の効率性と資源配分という2つの視点から、日本の科学技術力を考える。効率性という観点では、日本的経営が賛美されていた1980年代にはすでに日本企業の研究開発の効率性の低下は始まっていたことが明らかにされる。また資源配分に関しては、日本企業は基礎研究の割合をわずかながら上昇させる一方で、大学がその資源を基礎研究から、応用・開発研究へと移してきている姿が浮かび上がる。企業は基礎研究の割合を低下させ、大学がその割合を高めているアメリカとは対照的な傾向である。知識の普遍化という観点から、この動きは日本のイノベーション・システムに大きな影響を与える可能性があると論じる。
野間幹晴(一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授) 日本企業の競争力はなぜ回復しないのか:配当行動と投資行動をめぐる2つの通説への反駁
  日本企業について、まことしやかに語られる2つの通説がある。1つは、「アメリカ企業の配当性向は高いのに対して、日本企業の配当性向は低い」というものである。もう1つは、「アメリカ企業は近視眼的な投資を行うのに対して、日本企業は長期的な視野に基づいて投資を行っている」という通説である。本稿では、日本企業と海外企業の財務データを比較検証し、これらの通説が成り立っていないことを示す。本稿の目的は、通説から導かれた日本企業に対する誤ったイメージを払拭し、日本企業の競争力の強化に必要な議論を行う上での素地を整えることである。
古賀健太郎/谷守正行(一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授/りそなホールディングス財務部 兼 りそな銀) 日本の金融業における管理会計と競争力
  一時は財務的危機に陥ったりそな銀行の業績の回復には、目を見張るものがある。同行の競争力向上の背景には、新しい管理会計の手法を積極的に適用したことがある。旧来、日本の金融業では間接費比率が高いために、直接費を詳細に計算する伝統的な原価計算では、原価が発生する構造を理解しづらく、金融業の実態を十分に捉えていなかった。しかし最近の管理会計では、伝統的な原価計算を超えて活動基準原価計算(ABC)、バランスト・スコアカード(BSC)、Economic Value Added(EVA)といった、さまざまな手法が開発されている。本稿では、日本の金融業において、これらの管理会計の最近の手法が、どのように競争力向上に寄与しているのかを考察する。
●ビジネス・ケース
工藤秀雄/延岡健太郎(東京理科大学経営学部助教/一橋大学イノベーション研究センター教授)
パナソニック:IH調理器の開発
  パナソニックは、1974年に国内初のIH調理器の商品化に成功した。同社は、さまざまな技術的課題を乗り越えて市場を切り開きながら、35年以上にわたって技術開発と商品化を継続させてきた。現在、国内の白物家電市場が成熟するなかでも、ユーザーの高い満足度を背景に、IH調理器の市場は拡大している。本ケースでは、なぜパナソニックが他の企業以上に活発に、しかも長期にわたりIHを商品化し技術を蓄積し続け、IH調理器事業においてリーダーの地位を維持できたのかを明らかにする。
●ビジネス・ケース
田路則子/天野倫文(法政大学経営学部・ビジネススクール教授/東京大学大学院経済学研究科准教授)
積水化学工業:合わせガラス用中間膜事業の創造と成長戦略
  中間膜とは合わせガラスに使われるフィルムのことであり、自動車のフロントガラスへの使用が法制化されてから、世界的な需要拡大とともに、グローバル市場を形成した。その後、用途は建築用に拡大し、太陽電池パネル用市場の将来性も期待されている。積水化学工業の中間膜事業は、アメリカの大手企業に遅れること20年で生産を開始しながらも、世界で有数の事業に育った。事業創造から成長プロセスを振り返りながら、どのように業界のなかで競争優位性を構築してきたかを明らかにする。
●技術経営のリーダーたち(8)
 碓井 稔(セイコーエプソン株式会社 代表取締役社長)
 「本質を、究め、極めて、未来を拓く」
●連載:経営学のイノベーション:サービス・マネジメントのフロンティア(2)
 藤川佳則 「『モノかサービスか』から『モノもサービスも』へ」
●コラム連載:「人勢」議論(3)
 金井壽宏 「汎化された自己効力感:できるという気持ち・覇気が持てる分野を広げる」
●私のこの一冊
 遠山亮子 「資源ベース企業理論の古典:エディス・ペンローズ『企業成長の理論[第3版]』」
 新藤晴臣 「戦略形成の“手ざわり感”:ヘンリー・ミンツバーグほか『戦略サファリ』」
●マネジメント・フォーラム
 坂根正弘(株式会社小松製作所 取締役会長):
       
インタビュアー・米倉誠一郎
 「環境・安全・ICT の分野でダントツ商品を提供しアジアとの共存共栄をめざします」
●用語解説
 島貫智行 「雇用の境界」



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