2011年12月31日土曜日

2011年度 Vol.59-No.2

2011年度<VOL.59 NO.2> 特集:転換期の金融規制と金融ビジネス


12・3・6・9月(年4回)刊
編集 一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社

2011年度<VOL.59 NO.2>
特集:転換期の金融規制と金融ビジネス 世界を震撼させたリーマン・ショックから3年が経過し、グローバル金融危機を受けた金融規制の再構築が、世界規模で進行している。本特集では、危機後の世界における金融規制の枠組みを展望するとともに、その内容を吟味し、また、新しい枠組みがビジネス環境の変化として金融業に及ぼす影響を検討する。さらに、常に新しいフロンティアを開拓してきた世界の金融ビジネスの歴史を振り返った上で、今後、アジア経済の力強い成長を、日本の金融業が自らの繁栄に結びつけることができるかを模索する。
佐藤隆文(一橋大学大学院商学研究科教授) 金融規制改革の潮流と望ましいプルーデンス政策への展望
 
  グローバル金融危機を受けて、世界的な金融規制の再構築が進行中である。項目は広範多岐にわたり、国際的にも大きな広がりと勢いを伴っている。背景には、「市場型システミック・リスクの顕在化」という今般の危機の特徴があり、多様な要因の複合的作用によって市場の混乱がもたらされるメカニズムが存在した。本稿では、これらのことを確認した上で、規制改革項目の多くが妥当な「ねらい」に向けられていることを理解しつつ、それらがもたらす副作用にも留意すべきことを指摘する。そして、実効性があり副作用の少ない望ましいプルーデンス政策の方向性として、①重要なリスクにフォーカスした規制・監督、②多様なビジネスモデルや市場構造に適合できる柔軟性、③ルール一辺倒でないアウトカム重視のアプローチ、を提案する。
翁 百合(株式会社日本総合研究所 理事) マクロプルーデンスの視点に立った金融監督政策
  欧米諸国では、金融危機を経て抜本的な監督規制の見直しが進捗している。それらは、全体として見ると規制強化の流れだが、規制の哲学の変化もうかがわれる。すなわち、金融システム全体の安定性を確保する「マクロプルーデンス」の視点の重視である。具体的には、金融機関行動がシステミックリスクをもたらすメカニズムに注意し、マクロ経済と金融機関行動の関係をより監視するといった内容である。こうした視点は今後の監督政策にきわめて重要である。しかし、システム上重要な金融機関をどう扱うか、規制によって景気との同調性をどう抑制するか、といった規制改革の各論を見ると技術的難点やさまざまな副作用も予想される。規制体系の構築には今後さらなる検討が必要と考えられる。
齊藤 誠(一橋大学大学院経済学研究科教授) 自己資本比率規制のマクロ経済学的な根拠について
  バーゼル銀行監督委員会が2010年8月に公表した報告書は、経済学的な分析に基づいて、自己資本比率規制の大幅な引き上げが金融危機の発生確率を顕著に引き下げると結論づけている。しかし、そうした結論を導くための経済学的な手法には、実証的にも理論的にも深刻な問題点が含まれており、同評価の結論を字義どおりに受け取ることは難しい。本稿では、簡単な資産価格決定モデルを用いて、仮にバーゼル委の長期的な政策評価が正しいとすると、株式市場の資産価格形成について不自然な結果が生じることを示す。具体的には、バーゼル委が示すような金融危機発生確率の顕著な低下が見込まれるとすると、自己資本比率規制強化のアナウンスメントで株式市場が高騰するという、不自然な経済学的帰結をもたらす。バーゼル委の評価は、マクロ経済学的に見て適切と判断できない。
淵田康之(野村資本市場研究所研究理事) 規制強化が金融ビジネスにもたらす中長期的影響
  金融危機を踏まえて導入される各種の規制は、銀行に預金、貸し出し、決済などの伝統的業務への回帰を促す側面がある。しかし、これらの業務の収益性は決して高くない。そこで銀行としては、グローバル展開の強化といった対応が重要となろう。この場合、新たな規制環境の下では、金融業のグローバル展開は、過去とは異なる姿となっていく可能性が高い。特に、アジアの重要性が一段と高まることが予想される。
藤井眞理子(東京大学先端科学技術研究センター教授) 金融ビジネスのグローバル展開──歴史からの示唆
  金融機関のあり方が問い直され、金融危機後の金融システムのモデルが明らかではない現在、金融ビジネスの将来像は描きにくい。しかし、日本の金融が国際的な金融市場や競争力のある金融サービス業をめざすのであれば、成長するアジア経済という環境を生かすことが不可欠であることは明らかであろう。英米の先進的な金融ビジネスがグローバルな展開を遂げてきた歴史を振り返ることは、中長期の日本の金融の方向性を考える際にどのような示唆を与えてくれるのだろうか。また国際市場での競争は、自由化の過程で展開された日本の金融機関の競争とどのような点で異なるのだろうか。危機以前の金融の展開について、日本と英米を比較しつつ振り返り、日本の金融の将来を拓く条件について考える。
関根栄一(野村資本市場研究所北京代表処首席代表) 世界的金融危機後の中国の金融・資本市場改革
  中国では、1978年の改革開放以降、金融・資本市場の整備に向けた改革が断続的に行われている。また改革にあたっては、1997年のアジア通貨危機や2001年のWTO(世界貿易機関)への加盟といった「外圧」も原動力となった。2008年秋以降に深刻化した世界的金融危機では、金融機能の強化の観点や、中長期的な金融業の規制緩和が進められ、危機以前の規制や制限も見直される契機となり、上海国際金融センターや上海証券取引所による戦略プランの発表といった「攻め」の動きも出てきた。世界的金融危機は、中国の金融・資本市場の世界的なプレゼンスを向上させた一方で、積み残された課題もある。為替・金利・資本取引の自由化では工程表が不可欠であり、日本の経験も参考になるだろう。
●ビジネス・ケース
安田隆二(一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)
スルガ銀行──個人金融サービス・カンパニーへ進化し続ける地方銀行
  静岡県の二番手中堅地方銀行であったスルガ銀行が、普通の地方銀行から個人金融サービス・カンパニーへ見事に変身を遂げ高収益銀行となった。最初の5年間は、トップダウンで一大革新を断行する企業革命経営方式で進めたが、その後は 15年かけて、社員の自発性を尊重し、小さなイノベーションの継続を重視する企業進化経営方式で推進されてきている。使命感の共有を重視する「芯化」、コアコンピテンスを深めていく「深化」、新しいドメインを果敢に開拓していく「新化」の3つの「シンカ」が追求され続けている。なぜ、企業革命が企業進化に転換されていったのであろうか。経営者の意識と行動を切り口にその理由を分析する。
●ビジネス・ケース
新津泰昭/延岡健太郎(一橋大学大学院商学研究科博士後期課程/一橋大学イノベーション研究センター教授)
日本写真印刷──Nissha IMDによる躍進
  日本写真印刷は、1983年に印刷技術を応用してプラスチックの成形と加飾を同時に行うシステム「Nissha IMD」を開発した。同社は、もともとは印刷会社でありながら、システムに必要なプラスチックや金型などの技術的課題にも積極的に取り組んできた。その結果、Nissha IMDは、商品性(デザイン性)と量産性、品質の安定性という点で高く評価され、現在、携帯電話やノートパソコンの市場において圧倒的なシェアを獲得している。本ケースでは、日本写真印刷がなぜそこまで大きな成功を収めることができたのかを説明する。
●経営を読み解くキーワード
 青木康晴(名古屋商科大学商学部専任講師)
 「トンネリング」
●技術経営のリーダーたち(12)
 佐藤穂積(JSR株式会社 取締役兼常務執行役員)
       インタビュアー・中馬宏之/延岡健太郎/青島矢一
 「お客さんに直接会って工場の現場に足を運んでこそ本質をつかむことができる」
●連載::経営学のイノベーション:サービス・マネジメントのフロンティア(5)
 藤川佳則 「価値共創の実務的示唆──日本企業の機会と課題」
●コラム連載:偶然のイノベーション物語(1)
 榊原清則 「石鹸物語」
●私のこの一冊
 伊藤秀史 「戦略的行動を深く理解する──トーマス・シェリング『紛争の戦略─ゲーム理論のエッセンス』」
 淺羽茂 「「定説」を疑い新たなモデルを構築する──梅原猛『水底の歌─柿本人麿論』(上・下)」
●マネジメント・フォーラム
 イアン・ブレマー(ユーラシア・グループ 代表取締役社長):
       
インタビュアー・米倉誠一郎
 「枠組みなきGゼロ時代に中国という国家資本主義とどう向き合うべきか」



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