2014年6月13日金曜日

【一橋ビジネスレビュー】 2014年度 Vol.62-No.1

2014年度<VOL.62 NO.1> 特集:日本企業の組織と戦略









12・3・6・9月(年4回)刊編集
一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社



特集:かつて日本企業の強みとされた「ミドルを中心とする戦略の創発プロセス」はいかにして機能不全に陥ったのか。日本企業に明るい兆しの見える今こそ、日本企業の機能不全プロセスを検証した上で、成長に向けた一手を構想する必要があると思われる。本特集では、2004年から2013年までの5回にわたる継続的な質問票調査による実証研究の結果を踏まえ、まず日本企業低迷の原因を鳥瞰する。その上で、低迷の原因を組織の〈重さ〉を中心にして、組織の構造的要因、コミュニケーションプロセス、リーダーシップ、ミドルを中心とした意思決定プロセスの観点から考察する。機能不全を克服する上で、望ましい組織構造のあり方とは何か。社内コミュニケーションには何が重要か。近年のリーダーに求められる要因とは何か。意思決定プロセスの機能不全を克服するためには何をしなければならないのか。このような経営課題について第一線の研究者が論じる。

特集論文Ⅰ 有機的組織の幻想
沼上 幹
(一橋大学大学院商学研究科教授)
日本企業が直面する経営問題を解決すべく組織変革に取り組むとき、官僚制を廃し、ミドルやロワーのイニシアチブを促進して、ヨコ方向のインフォーマル・コミュニケーションを活発化すればよいと素朴に考えている人は数多い。われわれは、「有機的組織=あるべき姿」とする思考を暗黙のうちに心に刻みつけているのである。本稿の目的は、この思考が幻想であると指摘するアカデミックな研究をたどりながら、組織問題を考える際に、その幻想にとらわれてしまったわれわれが組織変革の判断に際してバイアスを持っている可能性について警鐘を鳴らすことである。

特集論文Ⅱ 組織の〈重さ〉調査の方法と概要
加藤俊彦 
(一橋大学大学院商学研究科教授)
優れた日本企業の事業組織とは、どのような特性を有しているのであろうか。こういった問題意識に基づいて、2004年度から隔年で実施してきた5回分の調査データを概観する。主要な組織特性や業績指標と組織の〈重さ〉との関係を中心とする分析からは、組織をコンパクトにして、階層横断的なコミュニケーションが活発に行われるようにすること、戦略計画を重視するとともに、個人の業務にまで落とし込むこと、事業部長が明確な戦略目標を提示し、達成するための筋道を明確に描いて、組織内できちんと共有することなどが、機敏で的確な事業組織の運営に深くかかわる事象であることが明らかになった。

特集論文Ⅲ 日本企業の戦略志向と戦略計画プロセス
軽部 大
(一橋大学イノベーション研究センター准教授)
昨今、日本企業を取り巻く経営環境は複雑性と不確実性が増大している。このような環境下ではどのような組織プロセスを通じた環境適応行動が事業成果を上げているのだろうか。本稿では、日本企業の事業部(BU:Business Unit)に注目し、2010年度と2012年度に23社221BUについて質問票調査を行った結果をもとに、BUが直面する経営環境や戦略行動と、経営成果や戦略計画との関係を分析・検討してみると、次の4点が明らかになった。①絶対的な収益水準や相対的な事業成果の優位性は、経営環境や市場地位の差だけでは十分に説明できない、②BU間の優位性格差は、戦略志向性の違いに起因する環境適応のあり方の差によって説明できる、③戦略志向性が収益格差にもたらす影響は、環境変動の大きさで異なる場合がある、④戦略志向性には、計画プロセスの考慮によって改善する余地が存在する─である。昨今の不確実で複雑化する環境下における日本企業のBUの事前計画は、事後の環境適応を阻害し拘束するものではなく、むしろ事後の環境適応を促進する可能性を持つことを今回の分析結果は示唆している。

特集論文Ⅳ リーダーシップとミドル・マネジメントの戦略関与
佐々木将人
(一橋大学大学院商学研究科准教授 )
日本企業の経営において、リーダーシップの有効性とミドル・マネジメントの戦略関与の問題は非常に密接に結び付いており、その結び付きがうまく機能している企業が良い企業と考えられてきた。現在の日本企業の機能不全はこれらの結び付きに何か問題が生じているからではないだろうか。このような問題意識の下、本稿では、日本企業のBU(ビジネスユニット)におけるBU長のリーダーシップと、ミドル・マネジメントの戦略的な関与のあり方を検討する。具体的には、リーダーシップ要因としてBU長のタスク志向性と人間関係志向性、ミドル・マネジメントの戦略関与要因としてミドルの戦略コミュニケーションと戦略イニシアチブを取り上げて、組織成果との関係について検討を行った。「組織の〈重さ〉プロジェクト」第4回と第5回の参加BU(合計221BU)をサンプルとした定量的な分析を行った結果から、①BU長のタスク志向性と戦略コミュニケーションの重要性、②人間関係志向性が持つ補助的な特徴、③高パフォーマンス組織におけるBU長の強いリーダーシップとミドルの戦略コミュニケーションの併存─が確認された。

[特別寄稿]
エビデンスベースの知識創造理論モデルの展開に向けて
野中郁次郎/紺野 登/廣瀬文乃
(一橋大学名誉教授/KIRO代表・多摩大学大学院教授/一橋大学大学院国際企業戦略研究科特任講師)
1990年代初めに発表された知識創造理論は、経営における知識の重要性を提唱した日本発の経営理論である。企業の持続的発展のための経営理論として世界中に広がり、ナレッジ・マネジメントやSECIモデルなど、その知見は多くの企業経営に多大な影響を及ぼしている。この理論は四半世紀を経て、学際的な知見を取り入れて進化を続けている。その一方で、知識を効率的、効果的に創造して活用するために、その効率や効果を定量的に測るツールの構築を試みてきた。長期に及ぶ研究と実践の結果、2万サンプル以上のデータが蓄積され、その分析によって有意な関係性を得られるようになった。本稿では、知識創造理論の進化の歴史をたどりながら、定量調査で判明した測定・分析ツールを公開し、企業や組織が持続的に知識創造を行い、イノベーションを推進するための方法を考える。


[経営を読み解くキーワード]
リバース・イノベーション
鷲田祐一 (一橋大学大学院商学研究科准教授)

[技術経営のリーダーたち] 第20回
既成概念にとらわれない発想とそれを実現する技術力こそが未来を切り開く力だ
栗谷川 悟 (ソーラーフロンティア株式会社 取締役 専務執行役員 技術本部長兼生産本部長)

[ビジネス・ケース]
東洋紡――逆浸透膜の開発と事業展開
藤原雅俊/ 青島矢一
 (一橋大学大学院商学研究科准教授/一橋大学イノベーション研究センター教授)
国内外で水事情に苦しむ地域がある。このような地域向けに海水から淡水を造って供給する高度な水処理の技術に欠かせない製品が、逆浸透膜のなかでもRO膜と呼ばれる分離膜である。かつて世界最大級の繊維企業であった東洋紡は、1960年代以降の繊維業の成長鈍化に伴い、新規事業の1つとして逆浸透膜事業に着手した。どちらかといえば後発で製品開発に取り組んだ同社は、他社とは異なる酢酸セルロース系中空糸型RO膜の開発を選択し、また中東という市場に特化した結果、逆浸透膜事業の拡大に成功している。本ケースでは、東洋紡による逆浸透膜事業の歴史をひもときながら、「水がいくらで造れるか」という競争における同社の競争優位の源泉を捉え、その源泉を得るに至った要因を戦略論の観点から考察する。

[ビジネス・ケース]
コニカミノルタ――ヨーロッパにおけるカラー複合機の躍進
渡辺紗理菜/ 栗木 契
(神戸大学経済経営研究所特命助教/ 神戸大学大学院経営学研究科)
オフィス向け複写機・複合機市場は、複写機メーカーのビジネスモデルの特徴により、各社の市場シェアが安定化しがちな構造になっていた。そのような市場特性のなかでコニカミノルタは、ヨーロッパ市場でこの10年間ほど継続してシェア拡大を続け、中下位から市場シェアトップへの躍進を果たした。同社のヨーロッパ市場での躍進は、カラー複合機の開発と生産で先行しただけでなく、マネージド・プリント・サービス(MPS)を積極的に取り入れることでカラー複合機の拡販を後押しし、またヨーロッパでの直販体制を強化することでMPSへの対応能力を高めてきたことに支えられている。本ケースでは、コニカミノルタが採った、競合他社が先行していたサービス・イノベーションを自社の経営資源と結び付けて活用するという、いわば偶発的な要素をつなぎ合わせて活用するエフェクチュアルな取り組みについて考察する。

[新連載] 経営学への招待 第1回
なぜ経営学を学ぶのか――経営は科学か、それともアートか
青島矢一/榊原清則
(一橋大学イノベーション研究センター教授/中央大学大学院戦略経営研究科教授)

[コラム]経営は理論よりも奇なり 第2回
アメッポンとアメリカ例外論
吉原英樹 (神戸大学名誉教授)


[私のこの一冊]
■存在自体が価値を持つ、すごい本――『オーガニゼーションズ』
 高橋伸夫 (東京大学大学院経済学研究科教授)

■不幸のなり方を通じて、幸せになる方法を教えてくれる――『希望の心理学』
 福嶋 路 (東北大学大学院経済学研究科教授)

[マネジメント・フォーラム]
インタビュアー/米倉誠一郎
世の中は変化していく 時代も変化していく だから、常にチャレンジする 
澤田秀雄 (株式会社エイチ・アイ・エス 代表取締役会長 )

[投稿論文]
人事部門による変革型リーダーシップの効果
関口倫紀
(大阪大学大学院経済学研究科教授)
本研究は、変革型リーダーシップの概念を人事部門の役割に適用することによって、日本企業の人事部門による変革型リーダーシップが従業員の職務行動に与える影響について検討した。日本の大企業および中堅企業に正社員として勤務する社会人641人をサンプルとする調査データを分析した結果、従業員が自社の人事部門に対して抱く変革型リーダーシップ知覚が、組織的アイデンティフィケーションを介して従業員の2種類の役割外行動(援助行動およびプロアクティブ行動)に影響を与えうることが確認された。また、このプロセスは、エンプロイヤビリティが相対的に低い従業員において顕著であった。本研究の結果から、企業の人事部門が変革型リーダーシップを発揮することが企業の業績を高める上で一定の効果をもたらす可能性が示唆される。


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