2014年9月9日火曜日

【一橋ビジネスレビュー】 2014年度 Vol.62-No.2

2014年度<VOL.62 NO.2> 特集:ベンチャーとIPOの研究―なぜ、公開後低成長に陥るのか








12・3・6・9月(年4回)刊編集
一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社



特集:2013年はリーマンショック以降続いたIPO低迷期の底から脱するターニングポイントとなった年だと考えられる。2014年上期も回復基調は継続しているようだ。安倍政権が2014年6月に閣議決定した「日本再興戦略 改訂2014」で「産業の新陳代謝とベンチャーの加速化」を政策の柱の1つに位置づけたことや大手企業のコーポレート・ベンチャー・キャピタルによる社外ベンチャー投資を通じてイノベーションを起こす動きが活発化していることなどは、「またブームで終わるのではないか」という市場関係者の不信感を払拭するものと考えられる。一方で、依然として、IPOを行う企業数がアメリカに比べると少ない、IPO後に高い成長を実現できる企業は必ずしも多くない、といった課題もある。本特集では、このようなベンチャーとIPOをめぐる論点について、研究者、ベンチャーキャピタリスト、証券取引所関係者や政府関係者が議論を展開する。

特集論文Ⅰ IPO後の高成長企業と低成長企業
忽那憲治
(神戸大学大学院経営学研究科教授)
IPO後の高成長企業と低成長企業 忽那憲治 神戸大学大学院経営学研究科教授 イノベーション、雇用創出、経済の活性化のために、高成長企業の輩出が求められている。本稿では、1997年9月のブックビルディング方式の導入から2010年末までの新規公開企業を対象に、業績パフォーマンスおよび株価パフォーマンスを分析した。雇用創出、収益性、株価のいずれで見ても、残念ながらIPO(新規株式公開)後に高いパフォーマンスを持続できているとは言いがたい。IPO時の資金調達もその後のパフォーマンスの向上につながっておらず、ベンチャーキャピタルやアンダーライターの名声による保証機能も十分機能していない。高成長企業をいかに生み出すかは重要な政策的課題でもあり、高成長企業が持つ特徴を明らかにしていく研究の蓄積と、それを反映した実践が不可欠である。

特集論文Ⅱ ベンチャー企業の価値評価 
山本一彦/大久保 亮
(株式会社クラシック・キャピタル・コーポレーション 代表取締役 チーフ・エグゼクティブ・パートナー/株式会社クラシック・キャピタル・コーポレーション 取締役 パートナー)
一般の投資家は、コーポレートファイナンスの世界の住人である。そこでは、分散投資によってリスク低減が可能であり、資本市場での投資家間の競争と豊富な代替資産の存在によって、あらゆる資産は一物一価に収束する。しかし、革新的なベンチャー企業とそれを創出するアントレプレナーは違う。アントレプレナーは分散投資ができず、かつアントレプレナー自身とベンチャー企業には代替性がない。したがって、アントレプレナーとそれ以外の投資家とでは、同じベンチャー企業への投資であっても要求するリターンが異なってしかるべきである。本稿では、最新のアントレプレナーファイナンス(ベンチャーファイナンス)理論について解説する。これまで勘や経験則に頼る部分の大きかったベンチャー企業の価値評価が理論化され、アントレプレナーがリスクに見合ったリターンを享受することが常識となれば、事業創造も活発になるであろう。ベンチャー企業を生み出す本質はファイナンスにある。

特集論文Ⅲ 高成長企業における経営者持ち株比率と企業価値
          ――創業経営者に着目した実証分析
渡邉佑規
(SMBCベンチャーキャピタル株式会社 投資部部長代理)
ソフトバンクや楽天など、いわゆる創業経営者(Founder CEO)によるオーナー企業の活躍が目立つ。その一方で、創業経営者によるオーナー企業の負の一面が顕在化し、マスコミ報道を賑わすことも珍しくない。果たして、経営者による株式保有は企業価値の向上をもたらすのだろうか。本稿では、まず東証マザーズ規株式公開(IPO)を行った企業を対象に、経営者持ち株比率と企業価値の関係を実証的に分析する。その上で、孫正義社長や三木谷浩史会長のような創業経営者の有無が経営者持ち株比率と企業価値の関係に影響を及ぼすのかについても検証する。

特集論文Ⅳ IPO市場の現状と東証の取り組み
清田 瞭
(株式会社東京証券取引所 代表取締役社長/株式会社日本取引所グループ 取締役)
2013年7月に上場したサントリー食品インターナショナルの公募・売り出し総額は、世界第2位の規模となり、大きな注目を集めた。また、IPOを実施した企業の募と売り出しの合計額も5000億円を超えるなど、2013年はリーマンショック以降のIPO低迷期の底から脱するターニングポイントとなった年であり、2014年上期も回復基調が継続している。本稿では、最近のIPOの実情に触れるとともに、さらに多くの魅力ある企業がIPOを行い、上場後も持続的に企業価値を実現するために、東京証券取引所が現在取り組んでいる「TOKYO PRO Market(プロ投資家向け市場)の運営」「議決権種類株式を利用したIPO」「外国の市場に上場する日本企業による東証への重複上場」「IPO後間もない企業への支援」などの施策について解説する。

特集論文Ⅴ ベンチャー政策の新しい展開
石井 芳明
(経済産業省経済産業政策局新規産業室 新規事業調整官)
安倍政権の経済政策の第三の矢である成長戦略「日本再興戦略」(2013年策定)のなかで、「産業の新陳代謝とベンチャーの加速化」が政策の柱の1つに位置づけられた。2014年の「日本再興戦略 改訂2014」でも、ベンチャーが次々と生まれ、成長分野をけん引する環境の整備が重要な課題であるとされ、ベンチャー政策は、まさに政策の表舞台で注目されるアジェンダとなった。本稿では、「なぜ、ベンチャーなのか」「日本でなぜベンチャーが育っていないのか」「これまでのベンチャー政策とこれからの政策は何が変わるのか」といった視点から、成長戦略におけるベンチャー政策の新展開について解説する。

特集論文Ⅵ コーポレート・ベンチャー・キャピタルによるイノベーションと企業価値の探求
野間幹晴
(一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授)
コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)によるベンチャー企業への投資(CVC投資)を通じてイノベーションを起こし、企業価値を高めようとする企業が増えてきている。本稿ではまずアメリカにおけるCVC投資の動向を鳥瞰し、CVC投資の事例について分析する。続いて、CVC投資によってベンチャー企業と大企業のイノベーションに拍車がかかり、企業価値が向上しているかを検証した実証分析をレビューする。そして最後に、日本企業がCVCを通じてイノベーションを起こし、企業価値を高めるための条件について検討する。 

[経営を読み解くキーワード]
ソーシャルネットワークと戦略マネジメント
中野 勉
(青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授)

[技術経営のリーダーたち] 第21回 
異分野・異文化への興味と現場に身を置く情熱が新しい変革を生み出す
久世和資
(日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員研究開発担当)

[ビジネス・ケース]
市場調査業界――ネットリサーチの登場と新旧企業の攻防
小阪玄次郎(上智大学経済学部経営学科准教授)/上智大学小阪ゼミナール
新製品の開発・販売をする際に消費者の意識調査で得られる情報は欠かせない。このような情報を扱う市場調査業界の規模は2012年度時点で1819億円。この業界で特に伸びているのが、インターネットを利用したネットリサーチの分野である。2012年度までの10年間で約5.1倍も伸びているという(市場調査業界全体の伸びは約1.4倍)。インターネットの普及により、2000年代前半に成長期に入ったネットリサーチ業界では新規参入企業が相次ぎ、リサーチ会社間で激しい競争を繰り広げている。本ケースでは、このような成長を続けるネットリサーチ市場において、競争優位の状況を作り出している3社に着目する。ネットリサーチのマクロミル、市場調査業界最大手のインテージ、1000万人近いモニター(回答者)のネットワークを有するクロス・マーケティングが採用するビジネスモデルの比較検討を通じて、各社の競争優位性が生み出されている要因を探る。

[ビジネス・ケース]
パナソニック――モノリシック2波長高出力半導体レーザー キャッシュカウを育てる成熟市場での戦略
三浦紗綾子/清水 洋
(就実大学経営学部専任講師/一橋大学イノベーション研究センター准教授)
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)の観点からすれば、衰退が予想される成熟市場において自社製品が大きなシェアを獲得することの意味は大きい。成熟市場で支配的な地位を確立できれば、その製品はキャッシュカウ(カネのなる木)として利益を確保し続けることができるからだ。本ケースでは、成熟が予想されるCDやDVDの光ディスクドライブ用の半導体レーザー市場において、パナソニックが市場のリーダー企業の製品を代替できるモノリシック2波長高出力半導体レーザーを投入し、高いシェアを獲得して市場を支配できるようになった成功要因を探る。その上で同社の事例を通じて、企業が成熟市場でどのようにしてキャッシュカウ事業を創り上げるかについて考察する。

[連載] 経営学への招待 第2回
経営学の見取り図を描く――さまざまな領域を「パノラマ」で見る
青島矢一 / 榊原清則
(一橋大学イノベーション研究センター教授/中央大学大学院戦略経営研究科教授)

[コラム] 経営は理論よりも奇なり 第3回
経営の真実 
 吉原英樹 (神戸大学名誉教授)

[マネジメント・フォーラム]
インタビュアー/米倉誠一郎
世界に新しい価値を提供する日本発のベンチャーが育っている
梅田優祐/仮屋薗聡一
(株式会社ユーザベース 代表取締役共同経営者/グロービス・キャピタル・パートナーズ マネージング・パートナー )

[私のこの一冊]
■次のキャリアへ踏み出すきっかけとなった本――『エクセレント・カンパニー』
 横田絵理 (慶應義塾大学商学部教授)

■豊かな時代の働きがい――『利他のすすめ』
 三宅秀道 (専修大学経営学部准教授)    

ご購入はこちらから
東洋経済新報社 URL:http://www.toyokeizai.net/shop/magazine/hitotsubashi/
〒103-8345 中央区日本橋本石町1-2-1 TEL.03-3246-5467

47巻までの「ビジネスレビュー」についての問い合わせ・ご注文は
千倉書房 〒104-0031 中央区京橋2-4-12
TEL 03-3273-3931 FAX 03-3273-7668