2015年9月14日月曜日

【一橋ビジネスレビュー】 2015年度 Vol.63-No.2

2015年度<VOL.63 NO.2> 特集: ファミリービジネス その強さとリスク















12・3・6・9月(年4回)刊編集
一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社




特集:
経済の原動力のけん引車は多国籍企業だというイメージが強いが、主要産業国においてファミリー企業による付加価値や雇用の創出への貢献度は決して小さくないという。特に日本は、その貢献度が大きいファミリービジネス大国であり、高い業績パフォーマンスを続ける長寿企業が多いといわれている。にもかかわらず、日本におけるファミリービジネスの研究は発展途上である。本特集のねらいは、日本のファミリービジネスの研究を整理し、考察することで、今後の研究の方向性を示すことである。世界最古の企業といわれる金剛組の研究や日本のファミリービジネスの業績優位に関する実証研究結果から日本のファミリービジネスの強さの要因を分析し、その一方で抱えるリスクへの対処方法としてのファミリービジネスのガバナンスのあり方について議論を展開する。

特集論文Ⅰ ファミリービジネスの理論―昨日、今日、そしてこれから
奧村昭博(静岡県立大学大学院経営情報イノベーション研究科特任教授)
ファミリービジネスは、かつては遅れた存在とされ、消滅するだろうといわれてきた。ところが、世界的に見たときにファミリービジネスはきわめて長寿であり、業績も優れていることがわかった。これまでのファミリービジネス研究は欧米を中心になされてきた。本稿では、これまでの欧米におけるファミリービジネス研究を構築する資源ベース理論、エージェンシー理論および社会情緒的資産理論などをサーベイする。しかし日本はファミリービジネス大国であるにもかかわらず、その研究はまだ発展途上である。その意味で日本のファミリービジネスを理論的に研究する価値がある。これからの日本のファミリービジネス研究の方向性を提案する。

特集論文Ⅱ 日本のファミリービジネス研究
淺羽 茂(早稲田大学ビジネススクール教授)
ファミリービジネスのなかには創業者一族による閉鎖的な経営が問題を起こす企業もあるが、高いパフォーマンスを上げ続ける長寿企業も多い。日本におけるファミリービジネス研究は盛り上がりつつあるとはいえ、まだまだわれわれはファミリービジネスについて知らないことが多い。日本における実証研究は、当初はファミリービジネスと非ファミリービジネスとのパフォーマンス比較研究が多かったが、最近は情報開示、CSP、設備投資、研究開発など、いくつかの経営行動についてその特徴を探る研究が行われている。ファミリービジネスについての理論は多様なので、理論を区別できるような仮説群を設定した行動比較研究が今後も期待される。

特集論文Ⅲ ファミリービジネスと戦後の日本経済―上場企業のデータから見えてくる日本のファミリービジネスの姿
ウィワッタナカンタン・ユパナ/沈 政郁
(シンガポール国立大学ビジネススクール アソシエート・プロフェッサー/京都産業大学経済学部准教授)
上場企業の長期的なデータを用いて日本のファミリービジネスの特徴を明らかにすることが、本稿の目的である。主な内容は、ファミリービジネスは上場企業においても主要なプレーヤーであること、特に戦後の日本経済においてファミリービジネスが担ってきた役割は決して小さくなく、ファミリービジネスは平均的に見て非ファミリービジネスより優れた業績を示していること、そして日本のファミリービジネスが良い業績を示している背景にはファミリービジネスが潜在的に持ちうる弱みを克服する何らかの制度的措置を持っていること、制度的措置として婿養子の慣習とファミリー後継者への橋渡し役をする暫時専門経営者の存在に関する考察を行うというものである。


特集論文Ⅳ ファミリービジネスの発展成長とガバナンス
長谷川博和/米田 隆
(早稲田大学ビジネススクール教授/早稲田大学ビジネススクール客員教授)
主要先進国のなかでも、ファミリービジネスのGDPおよび雇用に対する貢献度が高いファミリービジネス大国日本。ファミリービジネスが日本経済の成長力、イノベーションを高める上で果たしている役割に、注目が集まっている。ファミリービジネスには、長期的事業評価が可能、価値観の継続性、迅速な意思決定という強みがある一方、その強みを阻害するような弱みも内包される。継続的に強みを生かすには、パラレルプランニングや、世代交代を進化のプロセスとするシステムや、永続戦略を可能にするガバナンス体制の構築プロセスが大いに参考となる。一族の価値観や伝統を生かしたガバナンス体制の構築により、ファミリービジネスの競争優位性は強化されるだろう。

特集論文Ⅴ ファミリービジネスの強みと課題―解決策としての家族憲章とファミリーオフィス
大澤真(株式会社フィーモ 代表取締役)
「いいファミリービジネス」は、短期的な成長・収益よりも永続を重視し、「利他の精神」に基づいて、自分・自社の利益よりも、社員、顧客、取引先、社会などステークホルダーの幸せや利益を優先している。一方でファミリービジネスは、ファミリービジネスであるがゆえの弱みを持つ。その最大の要因は「家族リスク」である。本来はプラスに働くはずの家族の結束は意外に崩れやすく、それは経営にも大きな影響を及ぼす。欧米では、このリスクを事前に回避する方策として、「家族」「経営」「所有」の3つのバランスを維持する基本的考え方を明確にし、そのための専門的組織を設立することが提唱されている。前者が「家族憲章」であり、後者が「ファミリーオフィス」である。

特集論文Ⅵ 世界最古の企業 金剛組の叡智に学ぶ―伝統産業のビジネスシステムから見た長期存続の条件
曽根秀一(静岡文化芸術大学文化政策学部専任講師)
世界最古の企業といわれる金剛組。その歴史の始まりは1400年以上もさかのぼる。「なぜ金剛組は、1000年以上にもわたり、存続することができたのか」というリサーチクエスチョンの下、筆者は、金剛家からの依頼により、十数年にわたって一次資料の発掘から調査、顧客や関連企業・地域などステークホルダーも含めたフィールドワークを行ってきた。さらに近年、資料調査が進み、これまでの定説が覆るなどさまざまな事実が判明してきた。その金剛組を論じるにあたり、欠かせないものとして、技能の人材と経営の人材が挙げられる。そこで、ビジネスシステム(事業システム)論のフレームワークを援用しながら、金剛組を中心とした長寿企業における制度化された叡智がいかに積み重ねられ、持続的競争優位を形成することができたのかを論じていく。現代企業が体験しえない危機や失敗を何度も繰り返し、乗り越えてきたのが長寿企業である。こうした、超長期的なスパンで企業の存続について論じることができるのは、長寿企業ならではの魅力であろう。


[経営を読み解くキーワード]
消耗品収益モデル
藤原雅俊
(一橋大学大学院商学研究科准教授)

[技術経営のリーダーたち] 第25回
自分の技術や仕事で、
世の中の人に貢献できるものを
創ろうという高い志を持つべき
尾道一哉
(味の素株式会社 常務執行役員 研究開発企画部長)

[ビジネス・ケース]
オリンパス――胃カメラとファイバースコープの開発
山口翔太郎/清水 洋
(一橋大学大学院商学研究科修士課程/一橋大学イノベーション研究センター准教授)
製造業において、技術革新によってコア技術そのものが破壊されるような場合には、従来のトップ企業のマーケットシェアが新技術を持つ企業に奪われ、業界のトップが交代するという例も少なくない。当該製品技術の変化がラジカル(急進的)であればあるほどトップを維持するのは難しいと思われるが、オリンパスの内視鏡事業は度重なる技術革新のなかでも、常にイノベーションを起こし業界をリードしてきたレアケースだと言えるだろう。本ケースでは、内視鏡の技術革新の流れを追いながら、そのなかで同社が業界をリードし続けてきた要因について考察する。

ジェイアイエヌ――眼鏡業界におけるSPA事業モデル
網倉久永/三輪剛也 
(上智大学経済学部教授/上智大学経済学部経営学科)
「JINS」ブランドで眼鏡チェーン店を展開するジェイアイエヌは、独自のSPA(製造小売)事業モデルで、日本の眼鏡業界を大きく変化させてきた。同社が眼鏡一式1万円を下回る価格で市場参入した2001年当時、眼鏡一式の平均価格は約3万円であった。SPA企業による低価格眼鏡は消費者の支持を集めてきたものの、ジェイアイエヌの損益は周期的に変動してきた。2008年度、09年度の赤字計上を受けた抜本的な事業改革によって、2010年度以降は売り上げ・利益ともに右肩上がりの上昇を見せていたが、2014年度には減収減益となっている。本ケースでは、ジェイアイエヌの事業モデルの概要と、SPA企業としての同社の経営課題を検討する。

[連載] 無印良品の経営学 第2回
無印良品の拡大
西川英彦
(法政大学経営学部教授)

[コラム] 価値創りの新しいカタチ─オープン・イノベーションを考える 第2回
HowとWhatをオープンにする
清水 洋 (一橋大学イノベーション研究センター准教授)

[マネジメント・フォーラム]
インタビュアー/米倉誠一郎
企業ミッションを実現し続けるためには、時代に沿った新しいアクションが必要。
新社長の舵取りにすべてを託す
髙田 明
(株式会社ジャパネットたかた 創業者・前社長/株式会社 A and Live 代表取締役)


[私のこの一冊]
■地上の「聖書」――トクヴィル『アメリカのデモクラシー』
 西口敏宏 (一橋大学イノベーション研究センター教授)

■日本企業の特有性を学んだ経済学の名著――青木昌彦『比較制度分析序説―経済システムの進化と多元性』
 川上智子 (早稲田大学ビジネススクール教授)

[第10回 一橋ビジネスレビュー・フォーラム]


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