2016年3月10日木曜日

【一橋ビジネスレビュー】 2015年度 Vol.63-No.4

2015年度<VOL.63 NO.4> 特集:負けない知財戦略

















12・3・6・9月(年4回)刊編集
一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社



特集:
1990年代後半から、日本では、アメリカにならいプロパテント政策を実行してきた。これに伴い、企業の知的財産権に対する意識が高まり、知財の戦略的活用や、事業戦略・研究開発戦略・知財戦略の三位一体の重要性が唱えられてきた。しかし、それらがどのようなもので、どうあるべきかの具体的イメージは、よく理解されているとはいいがたい。そこで、本特集では、プロパテント政策の初期から現在までの企業等の知財への取り組みを多角的な視点から論じ、今後どのように知財戦略に取り組んでいくべきかを考える材料と場を提供したい。

特集論文Ⅰ オープン・イノベーションと知財マネジメント
米山茂美/渡部俊也/山内 勇
(学習院大学経済学部教授/東京大学政策ビジョン研究センター教授/経済産業研究所 研究員)
企業の境界を超えた知識・アイディアの公開・共有・活用を前提とするオープン・イノベーション活動は、企業が持つ知識・アイディアの保護や専有を基礎とする知財活動との間に緊張関係を持つ。その意味で知財は、オープン・イノベーション活動を阻害するものと見なされがちであるが、実際にはそれを有効に実施し、そこから収益を獲得していくために重要な役割を果たす。本稿では、オープン・イノベーションに関するこれまでの研究動向を簡単に振り返った上で、インバウンド型とアウトバウンド型という2つの基本的なアプローチ別に、オープン・イノベーションを実現していくための知財や知財マネジメント、知財部門の役割や重要性について議論する。

特集論文Ⅱ 日本型プロパテント戦略とJapanese Electronics Paradox
荻野 誠 (東京理科大学専門職大学院イノベーション研究科教授)
米国特許取得トップ企業のなかで日本企業の利益率は他国(米韓)企業と比べ、際立って低い。また、半導体に関し日本企業は世界の特許出願の大部分を占めながら著しく売り上げシェアを落としている。特許保有と業績間のこのような不思議な現象(Japanese Electronics Paradox)は、日本企業が依然「キャッチアップ型知財戦略」「ロスリカバリー型知財戦略」の知財マネジメントを行っていることによるところが大きい。日本のエレクトロニクス企業復活の1つのカギは、1990年代に米国企業が行ったようにビジネスモデルと一体化した「マーケットリーディング型知財戦略」へ知財マネジメントを転換することである。

特集論文Ⅲ 革新的中小企業の事例研究に見る知財の創造と収益化
土屋勉男(桜美林大学大学院経営学研究科 国際標準化研究領域教授)
近年、地域の産業集積や産業クラスターの関連で立地し、地域産業の変革を先導する「革新的中小企業群」が注目されている。そこには、取引・信頼関係による技術基盤の形成や重要顧客を「リードユーザー」とするイノベーションが存在し、大企業の研究開発能力を取り込んだ「オープン・イノベーション」が展開されていることを明らかにする。そして、革新的中小企業では知財の創造とともに、知財の収益化の面でイノベーションが行われていることが重要だ。本稿では、長年にわたって革新的中小企業のイノベーションを調査・研究してきた著者が、豊富な事例を紹介しながら、革新的企業の「成長しない経営」「規模より持続」を大切にする経営、生き残りと成長のための戦略を探る。


特集論文Ⅳ 特許を媒介とした知識・資源の組み合わせ――革新的医薬の事例から
原 泰史/長岡貞男/高田直樹/河部秀男/大杉義征
(政策研究大学院大学科学技術イノベーション政策研究センター 専門職/東京経済大学経済学部教授/一橋大学大学院商学研究科博士後期課程(IMPP イノベーションマネジメント・政策プログラム)/弁理士・次世代バイオ医薬品製造技術研究組合/大杉バイオファーマ・コンサルティング株式会社 代表取締役会長)
特許制度には、発明がもたらす社会的余剰の一部を企業が利益として確保できる専有可能性への効果のみならず、発明が公開されることでさらなる発明を誘引する役割や、大学・研究機関による基礎研究の成果に特許権が付与されることで、それを利用した企業投資を促し商業化の可能性を高める役割がある。本稿では、特許制度における後者2つの役割に注目する。日本および米国で研究開発された5つの革新的医薬品の研究開発プロセスの分析を通じ、知識や資源の新たな組み合わせを生み出す媒介手段としての特許の重要性を明らかにする。

特集論文Ⅴ 「失われた20年」に日本企業が取得した特許の価値の検証
岡田吉美/長岡貞男/内藤祐介
(一橋大学イノベーション研究センター教授/東京経済大学経済学部教授/一橋大学イノベーション研究センター産学連携研究員)
特許権の価値を予測する変数として、成立した特許権のクレーム長さ(筆頭請求項の文字数)の逆数を提案し、非特許文献の引用の変数とともに、出願人前方引用数を被説明変数として検証を行った。被引用数がトップ1%であるようなきわめて重要な特許の価値の変動の説明は、従来の変数だけでは不十分で、クレーム長さ、非特許文献の引用が大きな説明力を有した。これは、特に電気・電子の分野で顕著であった。また、日本と主な外国の居住者が日本で取得した電気・電子分野の物の発明の特許について、クレーム長さ、非特許文献引用率についての1990年代以降の推移を比較し、1990年以降、わが国の企業のパイオニア発明の産出力が低下した可能性があることを示す。

特集論文Ⅵ ライセンス収入から特許無力化戦略へ――標準必須特許ビジネスの変化
江藤 学(一橋大学イノベーション研究センター特任教授)
近年の知財紛争では、標準必須特許という単語を聞くことが多い。これは、標準必須特許を盾にして戦うことは、巨額の賠償金を獲得する上でも、ライバル企業のビジネスを叩く上でも、通常の特許に比べて戦いが容易で、コスト効果が高いと考えられてきたからだ。しかし、ここ数年の知財紛争の判決やビジネスの動きは、その様相を変えつつある。標準必須特許のビジネスでの活用方法を、この変化にあわせて変えなければならない。本稿では、標準必須特許という言葉が生まれた背景から整理し、これまでの戦略とこれからの戦略の違いを見る。


[経営を読み解くキーワード]
対話型組織開発
加藤雅則 (アクション・デザイン 代表)

[ビジネス・ケース]
マツダ: マツダデザイン“CAR as ART”
延岡健太郎/木村めぐみ
(一橋大学イノベーション研究センター長・教授/一橋大学イノベーション研究センター特任講師)
近年、自動車メーカー・マツダが元気だ。すべての顧客に「走る歓び」と「優れた環境・安全
性能」を提供する、と宣言している同社オリジナルの「スカイアクティブ技術」と、「魂動」という統一されたデザインテーマを全面採用した新世代商品群が高い評価を受けているといわれている。とりわけ、2012年に「魂動デザイン」を採用した商品が導入されてからは、マツダの業績は好調であり、同社のカーデザインは、国際的な賞を次々に受賞するなど、日本の自動車メーカーのなかでも突出している。
本ケースでは、ものづくり企業から価値づくり企業へと転身を遂げつつある事例として、マツダのデザイン戦略を取り上げる。いかにして、マツダのカーデザインはアートに昇華したのか。同社のデザイン関係者・開発現場への聞き込み調査をもとに、その経緯を探っていく。

リコーイメージング: 高級コンパクトカメラ「GR」のブランドコミュニケーション
久保田進彦/大竹光寿 
(青山学院大学経営学部教授/明治学院大学経済学部准教授)
リコーの高級コンパクトカメラ「GR」は、成熟化するデジタルカメラ市場において、きわめて高いブランド力を誇っている。GRは、主要ターゲットであるプロ写真家やハイアマチュアから高い支持を受けつつ、一般ユーザーにも受け入れられるブランドへと成長した。その背景には、明確なコンセプトと設計思想を、卓越したブランドコミュニケーションによって、市場に伝達したことがある。GRのブランドマネジメントは、高機能・高品質を強みとしながらも、スペック競争に巻き込まれない「ものづくり」の貴重な事例として、私たちに重要な示唆を与えてくれる。

[連載]無印良品の経営学
[第4回]無印良品の再考
西川英彦 (法政大学経営学部教授)

[コラム]価値創りの新しいカタチ──オープン・イノベーションを考える
[第4回]ボトルネックを解消し、ボトルネックを創るオープン・イノベーション
清水 洋 (一橋大学イノベーション研究センター准教授)

[マネジメント・フォーラム]
インタビュアー/青島矢一・岡田吉美
ひたすら「よく見る」こと――これこそが、無から有を生み出すものづくりの原点
中村勝重 (三鷹光器株式会社 代表取締役社長)


[私のこの一冊]
■社会科学の存在意義を教えてくれた一文:─エンゲルス『フォイエルバッハ論』
 橘川武郎 (東京理科大学大学院イノベーション研究科教授)

■「探究」のプロセスと精神を描く:スタニスワフ・レム『ソラリス』
 中川功一 (大阪大学大学院経済学研究科准教授)


[第15回 ポーター賞受賞企業に学ぶ]
大薗恵美(一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)

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