2018年3月15日木曜日

【一橋ビジネスレビュー】 2017年度 Vol.65-No.4

2017年度<VOL.65 NO.4> 特集:次世代産業としての航空機産業









12・3・6・9月(年4回)刊編集
一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社


特集:航空機産業は、日本の次世代産業の1つの核として期待されている。世界経済の成長、特に途上国の経済発展がもたらす持続的な輸送需要の増大に伴い、今後、航空機市場の拡大が予測される。初の国産ジェット機MRJや躍進するホンダジェットなど、話題も多い。航空機産業の特徴は、裾野の広さにある。産業の成熟が指摘される日本においては、経済への波及効果のみならず、新技術開発の起爆剤となる可能性を秘めている。本特集では、航空機産業の各分野のリーダーに登場していただき、この産業の転換期を描写するとともに、新たな技術展開、産業発展の可能性と課題、日本経済や地域振興への波及などを議論する。

特集論文Ⅰ 航空機産業を俯瞰する――ジェット旅客機を例として
鈴木 真二
(東京大学大学院工学系研究科教授)
2015年11月11日、愛知県営名古屋空港において国産ジェット旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)が初飛行を行った。約半世紀前の1962年8月30日、同じ飛行場(当時は名古屋空港)において戦後初の旅客機YS-11が初飛行した。MRJは、YS-11以来の国産旅客機であり、初の国産ジェット旅客機として注目されたのだが、度重なる計画の遅れもあり、旅客機開発の難しさが改めて浮き彫りになっている。MRJがめざすジェット旅客機産業とはどのような産業なのか。海外旅行だけでなく、国内旅行でも日常利用されているジェット旅客機であるが、これまで国内で開発されてこなかったこともあり、国内ではなじみの薄い産業といえる。本論文では、航空機産業の代表としてジェット旅客機産業を俯瞰してみたい。

特集論文Ⅱ 航空機産業をめぐるビジネス
渋武 容
 (東京大学総括プロジェクト機構特任教授)
航空機産業、特に完成機事業における飽くなき技術開発と安全性向上の取り組みは、時には国益に絡む厳しい国際競争と国際協調の歴史である。その結果、複雑かつ高度に発達した航空機というシステムと、長期にわたっての運航の安全性を確保するための国際ルールなどの仕組みが形成されてきた。これらの仕組みは、実態として国際競争における差別化や価値の獲得においても大きな存在感を示している。近年、日本の航空機産業は、完成機事業への参入をはじめ、今後の発展に向けて大きな転換期を迎えている。本論文では、航空機産業の特徴や航空機の開発や運航を支える各種関連事業などの実情を述べるとともに、日本が今後厳しい競争のなかでいかに技術を高め、価値を生み、産業を発展させていくかについて考える。

特集論文Ⅲ 日本の航空技術と国際競争力
岩宮 敏幸/大貫 武/白水 正男
(宇宙航空研究開発機構 チーフエンジニア室 参与/宇宙航空研究開発機構 チーフエンジニア室 特任担当役/宇宙航空研究開発機構 チーフエンジニア室 特任担当役)
航空産業を支える航空技術。技術のインテグレーションとしての航空機は、「良い航空機が必ずしもよく売れるとは限らない」と言われはするものの、競合機に対して競争力を持つためには、少なくとも優れた技術を有する差別化された航空機であることが求められる。航空機に適用される技術は、10年以上かけて開発されてきているものがほとんどであり、非常に長期的な視野を持った研究開発が求められている。本論文では、日本の民間航空機技術に関する唯一の公的研究・開発機関である宇宙航空研究開発機構(JAXA)航空技術部門で行われている、研究開発の一部を紹介する。

特集論文Ⅳ MRJの取り組み――課題と展望
伊藤 一彦/佐倉 潔/小林 真一/田浦 伸一郎
(三菱重工業株式会社 民間機セグメント 企画管理部 マネージング・エキスパート/三菱航空機株式会社 飛行安全推進室長/三菱航空機株式会社 技術本部 主幹技師/三菱航空機株式会社 経営企画室 主幹技師)
YS-11以来50年ぶりの国産民間旅客機MRJは、現在、アメリカ・ワシントン州モーゼスレイクで飛行試験中であるが(2017年末時点の総飛行時間は約1600時間に到達)、MRJの設計が厳格な安全性基準に適合していることの証明に手間取り、初号機納入は当初計画から7年遅れて2020年半ばとなる予定である。MRJはいまだ開発の途中ではあるが、本論文では、今までの開発過程を振り返って、完成機開発にあたって三菱航空機が直面した主な課題とそれらに対する取り組みを紹介する。そして、そこから垣間見える、航空産業にとどまらない、日本の技術開発環境の問題点と解決の方向性について論じてみたい。

特集論文Ⅴ 新世代機導入による経営システムのイノベーション――OperatorからCo-creatorへの挑戦
西村 剛
(ANA総合研究所 主席研究員)
航空会社にとって、新機種および新エンジンの選定は、いつの時代においても経営上の最優先課題である。2018年1月現在、ANAグループは、16機種294機を保有している。本論文では、そのなかでも現在のANAの経営基盤を構築したといっても過言ではないボーイング767(-300/300ER、-300F/300BCF)、同777 (-300/300ER、-200/200ER)、同787 (-8、-9)の導入を契機に、ANAの経営システムがいかに高度化したか、単なるオペレーターから価値共創へと進化する過程を取り上げる。主に言及するのは、乗員・整備・運航のバックステージの事象であるが、論文の最後では、並行して進む顧客との接点であるフロントステージの改革の一例にも触れる。

特集論文Ⅵ 航空機産業における中小企業の挑戦
杉山 勝彦
(株式会社武蔵情報開発 代表)
全国に展開する航空機クラスター。航空機産業の裾野を広げ、中小企業の活躍場面を増やす動きとして期待は大きい。しかし、航空機のグローバルスタンダードに適合するために、ほとんどのクラスターが目標に掲げる共同受注・一貫生産の試みは、成功しているとはいいがたい。本論文では、典型的な地域クラスターである長野県飯田市のエアロスペース飯田と、プライムメーカーが強力に支援するジャパン・エアロ・ネットワークのケーススタディーを通して、共同受注・一貫生産型クラスターの成功の条件を探る。


[技術経営のリーダーたち]
[第32回]日本の宇宙航空事業を成長軌道に乗せる
並木 文春
 (株式会社IHI 理事 宇宙開発事業推進部長)

[連載]日本発の国際標準化 戦いの現場から
[第2回]生活支援ロボットの国際標準化
江藤 学/鷲田 祐一
(一橋大学イノベーション研究センター教授/一橋大学大学院商学研究科教授)

[連載]フィンテック革命とイノベーション
[第3回]仮想通貨の多様化と技術革新
野間 幹晴/藤田 勉
(一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授/一橋大学大学院国際企業戦略研究科特任教授)

[連載]ビジネスモデルを創造する発想法
[第7回]肝心なものは描かない――ziba tokyo平田智彦による「ホワイトスペース」のすすめ
井上 達彦(早稲田大学商学学術院教授)

[連載]クリエイティビティの経営学
[第6回]クリエイティビティを育むオフィスはどのようなものか?――日本のビジネスパーソン3000人の調査より
稲水 伸行(東京大学大学院経済学研究科准教授)

[ビジネス・ケース]
富士メガネ――ビジョンが未来を切り拓く
軽部 大/内田 大輔 
(一橋大学イノベーション研究センター教授/九州大学大学院経済学研究院講師)
世界には6560万人(2016年時点)もの難民・国内避難民がいる。企業の社会的責任活動という言葉が存在しなかった時代から、紛争地域の難民キャンプに赴いて検眼を行い、眼鏡を寄贈することで、難民らの視力向上を支援する活動を30年以上継続して行ってきた企業がある。札幌に拠点を置く富士メガネである。同社を率いる金井昭雄は、1983年のタイにおけるインドシナ難民への支援を手始めに、15万組以上の新しい眼鏡を難民らに寄贈し、彼らの視機能向上と見える喜びに奉仕してきた。2006年には日本人および企業経営者として初めてUNHCR「ナンセン難民賞」を受賞した。眼鏡は自立を助け、学びの機会を広げることで、未来を切り拓く力をもたらしてくれる。本ケースでは、このような世界的にも類を見ない献身的な人道支援活動が生まれ、長期に継続してきた過程とその理由を考える。

エア・ウォーター――M&Aによる事業ポートフォリオ構造の転換
加藤 崇徳
(茨城大学人文社会科学部講師)
エア・ウォーターは、産業ガス事業を主力としてきた企業である。産業ガスとは、鉄鋼や化学、医療などの目的に使用されるガスで、たとえば工場での製造工程などに用いられてきた。しかし、国内の大規模工場建設が少なくなってから、産業ガスのビジネスも大きな成長は見込めなくなっている。主力事業が成熟したとき、次の主力事業はどのように見つけ出されるのであろうか。同社はM&Aに成長の源泉を見いだした。とりわけ、小規模でありながら技術やサービスに優れた企業を次々と買収し、それらを自律的なネットワークとしてまとめ上げた。そのことで、従来の主力事業とは異なる事業分野を子会社集団として成長させ、事業ポートフォリオを変化させていったのである。本ケースは、こうした独特のM&A戦略を行っているエア・ウォーターの事業ポートフォリオの変遷をたどることで、成熟産業からの成長のヒントを探るものである。

[ポーター賞]
第17回 ポーター賞受賞企業に学ぶ
大薗 恵美
(一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)

[マネジメント・フォーラム]
インタビュアー/米倉 誠一郎
事業化の道をこじ開けて戦略的に価値創造に挑む
藤野 道格
(ホンダ エアクラフト カンパニー 社長兼CEO)

[トピックス]
本誌編集顧問・野中郁次郎名誉教授がハース・ビジネススクールの「生涯功労賞」を受賞


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