2019年6月10日月曜日

【一橋ビジネスレビュー】 2019年度 Vol.67-No.1

2019年度<VOL.67 NO.1> 特集:教育改革のニューウェーブ--未来のイノベーション戦士育成に向けて









12・3・6・9月(年4回)刊編集
一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社






特集:日本の教育改革が叫ばれて久しい。大学・大学院を中心とした高等教育システムの改革はもちろんだが、創造性や多様性を育む初等中等教育の改革も急務である。安倍政権は安易な教育無償化を掲げているが、今のままの教育を是認する形で無償化を進めてよいものだろうか。本特集では、「教育改革のニューウェーブ」と題して、これからの初等中等教育には何が求められ、これまでの文部科学省中心の教育改革に対してどんな新しいムーブメントが起きているのかについて議論を深める。そこでは世界の潮流を踏まえた教育改革や、現実に公立中学で果敢に取り組まれている教育実践を紹介する。また、本誌ならではの視点から、私企業から提供されている探求型授業、プログラミング授業、AIによる授業などを具体的に紹介し、21世紀型教育を進める新興ビジネスのあり方についても考察を深めた。


特集論文Ⅰ 21世紀型教育とは何か――OECDでの議論と日本発の新たな実践
鈴木 寛
(東京大学公共政策大学院教授、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)
OECD、ユネスコやG7教育大臣会合をはじめ、世界的に「21世紀型の教育」についての議論が活発化している。日本においても、2020年度から学習指導要領の改訂および大学入試改革が順次始まり、探究的科目(理数探究、総合探究)の新設やAO推薦枠の3割への拡大など、アクティブラーニングや課題解決型探究学習(PBL)が重視されつつある。本論文では、混乱が散見される教育改革の論じ方を改めて整理した上で、日本の教育の現状と改革を概観する。そして、OECD Education 2030の中間報告の概要紹介を通じ、21世紀型教育の理解を深めるとともに、わが国のPBL、探究学習についての代表的な先進事例を紹介する。

特集論文Ⅱ 新しい学校教育を創造する――千代田区立麹町中学校の挑戦
工藤勇一
 (千代田区立麹町中学校校長)
学校の本当の目的は、子どもたちが「社会のなかでより良く生きていけるようにする」ためにある。子どもたちには「自ら考え、自ら判断し、自ら決定し、自ら行動する」という自律する力を身につけさせていく必要がある。社会が目まぐるしく変化する今だからこそ、この「教育の原点」に立ち返らないといけない。こう考える著者は、千代田区立麹町中学校の校長として、宿題、定期考査、固定担任制など、「学校の当たり前」と思われている制度(手段)を廃止しながら、新しい学校教育の取り組みを次々に導入し、全国的に注目を集めている。本稿は、手段と目的を峻別し、学校をリデザインし続ける6年間にわたる著者の挑戦の記録である。

特集論文Ⅲ ビジネスを通じた教育改革――「クエストエデュケーション」の挑戦
宮地勘司
 (株式会社教育と探求社 代表取締役社長)
不透明感極まる現代社会においても、誰もが自分らしく、幸福に生きていくことができる。そんな社会をつくるためには、教育こそが最も早く、効果的なアプローチだ。そして、そのような教育をビジネスの力で実現する。企業が学びの題材となり、必要なリソースを提供する「クエストエデュケーション」。年間を通じた教育プログラムのなかで、子どもたちは社会の多様性と複雑さを体験的に学ぶ。本物の「生きる力」の育成である。著者は、教育改革を実践すべく、あえてビジネスという手段で起業し、いまや全国200校を超える中学校・高等学校を中心に、3万人以上の生徒が学ぶプログラムを提供している。本稿では、社会と教室をつなぐ探究型授業の取り組みを中心に、15年にわたる実践を通して見つけた新たな教育の可能性についての記録である。

特集論文Ⅳ 10代の1人1人の可能性を最大限に伸ばす令和教育論
――クリエイティビティーを育むライフイズテックの実践と挑戦
水野雄介
ライフイズテック株式会社 代表取締役CEO
日本はアントレプレナーシップを育てなければ未来がない。10代の若者には、誰にでも無限の可能性が存在している。そのためには従来の教育を変え、減点主義ではなく、諦めずにやり抜く力、志やチームの力などを学ばなくてはならない。著者は2010年に教育変革を掲げてライフイズテックを創業し、プログラミング教育の実践活動を行ってきた。1人1人がクリエイティビティーを発揮し、たくさんのアントレプレナーを輩出することをめざし、今まで4万人を送り出してきた。本稿は、教員の経験がある著者が起業に至るストーリーから、事業の展開および未来の目標までを語ったものである。令和という新時代の事業には社会性が求められる。著者が提唱するのは、社会的インパクトによる資金調達であるソーシャルIPOだ。これによって、ライフイズテックが21世紀の新しい学校を設立し、会社としても世界的な規模でイノベーションを起こせる組織をめざすことを宣言する。

特集論文Ⅴ アダプティブラーニングが公教育に果たす役割
――Qubenaを活用した公立中学校での実証を通して
神野元基/佐藤 潤
株式会社COMPASS 代表取締役CEO/株式会社COMPASS 取締役CMO
テクノロジーの導入によって、教育界にもEdTechという新しい動きが起こっている。AI時代の到来を背景に、子どもたちに求められる能力は、これまでの単純な知識技能から、自らが課題発見・解決する力へと大きく変化している。そうしたなかで、注目されているのがアダプティブラーニングである。これは個々の学習者の進捗や習熟度にあわせて、学習内容やレベルを調整しながら、AIが個々に合った適切な問題を提供する学習法である。本稿は、アダプティブラーニング教材「Qubena」を開発・販売するCOMPASSによる、公教育の現場への導入の実証記録である。ここから子どもたちの学習時間や学習態度はどう変わってくるのだろうか。そして、現場の教員に見えてくる課題はどこにあり、子どもたちの学びの先には何があるのだろうか。まだ始まったばかりの新しい挑戦をたどる。

特集論文Ⅵ アクティブラーニングから見る教育改革のこれから
――育まれるのは真の主体性か、隷属する主体性か
福島創太
東京大学大学院教育学研究科博士課程
2020年に向けた教育改革は、これまでに比べて教育の現場や社会への影響が著しく大きくなる可能性が高い。それは「何を教えるか」を超えて「どう教えるか」に迫る改革であるからだ。この「どう教えるか」の主眼が「アクティブラーニング(主体的・対話的で深い学び)」であり、本論文のテーマだ。アクティブラーニングとはどういうもので、どのような課題があるのか。そもそもどういった社会的背景で学校教育へと導入されようとしているのか。教育社会学者であり、全国の多くの学校で導入される教育プログラムの開発者でもある筆者が、アクティブラーニングの教育的機能と、社会において学校教育が担うべき機能について検討する。平成という時代を貫いた教育界の一大テーマである「新しい学力観」と「アクティブラーニング」をもとに、今、日本の学校教育改革に求められる論点を提示する。

[連載]全員経営のブランドマネジメント
[第2回]ブランドとは何か
鈴木智子
(一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻准教授)

[連載]日本発の国際標準化 戦いの現場から
[第7回]バイオプラスチック ――科学技術の流行と実社会の間で
江藤 学/鷲田祐一
(一橋大学イノベーション研究センター教授/一橋大学大学院経営管理研究科教授)


[ビジネス・ケース]
シマノ――自転車部品トップ企業の弛まぬ挑戦
武石 彰/青島矢一
京都大学大学院経済学研究科教授/
 一橋大学イノベーション研究センター長・教授
1921年に大阪府堺市にて鉄工所として創業したシマノは、自転車部品の製造・販売を主力事業とし、いまや同分野で世界をリードするトップ企業であり、「自転車界のインテル」との異名を持つ。しかし、同社の100年に及ぶ歴史をたどると、革新的な新製品による成功の背後で、さまざまな模索、試行錯誤、失敗を重ねていたことがわかる。本ケースで主に扱うのは、1980年代から今日にかけてシマノが弛まず続けてきた革新への挑戦の記録である。1980年代のマウンテンバイク向け部品の投入で自転車部品メーカーのトップに立ち、1990年代以降は市場の成熟化とさまざまなライバル企業の攻勢を受け成長は鈍化するも、その後は商品の多角化によって再び成長軌道に乗り、2010年代以降は、自転車の電動化に伴って拡大している新たな市場への取り組みを強化している。こうした目まぐるしい変化を遂げながら同社の発展と成長を牽引してきたのが、同社の基本原則であった。どのような原則でどのような挑戦を続けてきたのか。その歩みをたどっていく。

GLM――EVベンチャーによるビジネスエコシステムの構築
山田仁一郎/大阪市立大学商学部山田ゼミナール
大阪市立大学商学部・大学院経営学研究科教授、グリフィス大学客員教授
GLMは、2010年4月に京都大学発ベンチャーとして設立された自動車メーカーである。設立後わずか5年で、日本で初めてのスポーツEVの量産を開始した。GLMの創業者である小間裕康は、自動車メーカーの経営者としては異色の経歴を持ち、小間の経験がGLMの創業や社内マネジメントに影響している。設立時のGLMはスポーツEVを開発できるだけの技術および資金・人材も十分ではなく、部品メーカーとの提携、投資家からの出資、エンジニアの獲得などを模索するゼロからのスタートであった。いかにGLMは日本の自動車産業のなかで水平分業体制によるオープンイノベーションを起こし、独自のエコシステムを形成したのか。本ケースは、スポーツEV「トミーカイラZZ」の開発・量産に至るまでの過程を「技術・資金・人材」の獲得という観点から検証する。

メルカリ――「世界に通じるサービス」の発想と実現
江藤 学
一橋大学イノベーション研究センター教授
メルカリが築き上げた、スマートフォンで使えるフリマアプリ市場は、国内で大きな市場として確立した。さらに同社は、メルカリの顧客を核にして、メルカリエコシステムともいえる新しい生態系を構築しようとしている。メルカリのこのような発想はどこから生まれ、その成功のカギはどこにあったのか。本ケースでは、メルカリの創業者である山田進太郎へのインタビューなどをもとにそれらを探っていく。成功の軌跡には、市場の一般的認識とは異なる、山田の技術者魂が息づいている。


[マネジメント・フォーラム]
インタビュアー/米倉誠一郎
徹底的に勉強しないと日本には未来がない
出口治明
(立命館アジア太平洋大学(APU)学長)



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