2012年1月20日金曜日

MOTVシリーズ貸し出しについて


貸し出しについて 



ビデオならびに講義・研修などでのビデオの利用の手引き(ティーチング・ノート)を、以下の通り、貸し出します。
(媒体はVHSのみで、DVD等のご用意はございません)

■貸し出し期間
三週間

■費用
無料。ただし、送料はご負担いただきます。受取人払いでお送りします。利用後は、送料ご負担の上、ご返送ください。

■申し込み方法
以下のEメールアドレスにメールにてお申し込みください。
一橋大学イノベーション研究センター研究支援室
Email:chosa☆iir.hit-u.ac.jp(☆を@に変えてください
〒186-8603 東京都国立市中2-1

■講義・研修での利用の手引き(ティーチング・ノート)の貸し出しについて
利用の手引きは、講義・研修の担当者のみを対象に貸し出します。講義・研修の進め方などを解説したものですので、学生・受講生の方にはお貸しできません。利用の手引きの貸し出しの申し込みを受けた際に、申込者のご身分を確認させていただきますので、ご了承ください。

■利用上の注意
本シリーズ・ビデオは、教育(講義)、研究開発(研修)等を目的とした使用(各番組全て or 一部にかかわらず)を、各番組の原著作者から許諾をえています。積極的かつ柔軟にご活用ください。ただし、本シリーズ・ビデオの上映のみを目的とした「有料の上映会」は認められないので、ご留意ください(「無料の上映会」は、積極的に活用いただいて結構です)。その他、使用上の質問等に関しては、日本語版の著作権者である一橋大学イノベーション研究センター(上記連絡先)もしくは日本語版のプロデューサーであるKenji Communicationsにお問合せください。

MOTVシリーズあらすじ MOTV1-アメリカの革新シリーズ


各作品のあらすじ 



■MOTV1「イノベーションの世紀:アメリカの革新」シリーズ

1.  電話 ~その発明と革新
1876年にベルによって発明された電話が、単なる玩具としてしかみられていなかった初期の段階から、やがてアメリカ全土にわたるコミュニケーションをカバーする巨大な産業へと発展していくプロセスが描かれている。新興の電話会社であったベル社が巨大独占企業AT&Tへと変身をとげていくプロセス、その過程でのウエスタンユニオンとの特許紛争、特許の有効期限が切れた後の多数の独立系電話会社との競争、さらには、電話ネットワークが発展する過程に起きた様々な技術的、社会的な問題や電話がもたらしたアメリカ社会における変化などが紹介されている(51分)。

2.  電波の帝国 ~ラジオを創造した男たち
3人の人物(リー・デフォレスト、エドウィン・H・アームストロング、デヴィッド・サーノフ)が歩んだ人生を追いながら、ラジオとラジオ放送が誕生、発展していくさまが描かれている。マルコーニへの対抗心から無線通信の発明に傾注し、「オーディオン」の発明により自らを「ラジオの父」と自負するデフォレスト、彼が「発明」した三極管の原理を解明するなど、ラジオ放送技術の発展に大きく寄与したアームストロング、そしてそれらの技術を巨大なラジオ放送事業の実現へと結びつけ、成功の階段をのぼりつめたサーノフ。かれら三人の生い立ちから死に至るまでのいきさつを中心に据えながら、無線技術が、いくつかの技術革新を重ねながらラジオ放送、さらには後のテレビ放送へと発展し、それがアメリカの社会、経済、政治、文化を大きく変容させていく過程が明らかにされる(計113分:Vol.1 55分、Vol.2 58分)。

3.  カメラの鬼才 ~イーストマン・コダック物語
イーストマン・コダック社の創設者、ジョージ・イーストマンの人生をたどりながら、一般大衆向けカメラが誕生し、普及していく過程が描かれる。「重くてかさばり、現像用薬品も扱いにくく、携帯には不向き」--1870年代当時の写真が抱えていた問題を解決しようとしたイーストマンは、持ち前の几帳面さとアイデアによって、扱いやすく、携帯しやすいカメラ「コダック」を発売する。これによって、写真撮影はプロによるものというそれまで常識を覆し、アマチュアでも気軽に写真を楽しめる撮影と現像の仕組みを実現していく。その後、不況やイーストマンの性格が災いした技術者の解雇等によって一度は業績が落ち込むものの、世界経済の回復による投資市場の拡大や、写真フィルムを用いた映画産業の勃興、企業買収による技術取得によって製造可能になった安価なカメラ「ブラウニー」の発売などによって、コダック社はカメラ業界で確固たる地位を確立する。こうしてイーストマンは、誰もが気軽に大切な想い出を写真として残し、楽しめる世界を実現し、また、私財を投じて写真技術の発展や地域に寄与するなど、多くの人々に幸せと利益をもたらした。しかし、彼自身の人生は必ずしも幸せな幕の閉じ方をしたわけではなかった(52分)。

4.  真空管からトランジスターへ ~半導体産業の誕生と発展
20世紀最大の発明ともいわれるトランジスターがどのようにして開発されていったのか、開発を担った3人の研究者に焦点を当てながらそのプロセスを追う。1940年代後半、AT&Tの研究機関であるベル研究所では、拡大する長距離電話システムの効率的な運営のために必要な技術の開発を目指して、優秀な科学者を集めて増幅作用を担う真空管の代替品の開発に取り組んでいた。ショックリーをリーダーとして、ブラッタンとバーディーンの3人からなる研究者チームは、トランジスターの開発に集中する。1947年、試行錯誤を重ねた末に開発に成功し、「トランジスター」と命名される。しかし開発の過程で3人の優れたチームワークは崩れ、ブラッタン、バーディーンとショックリーとの間にはもはや埋めることのできない深い溝が横たわっていた。トランジスターは、発表当初、世間からはあまり注目されず、産業界の関心も薄かったが、1956年、3人はノーベル物理学賞を受賞する。3人はそれぞれやがてベル研を去るが、ショックリーの決断は後のシリコンバレーの発展の礎となっていく。彼は同地にショックリー・セミコンダクターを設立し、その中のメンバーのムーアらが後にフェアチャイルドを、そしてさらにその後にインテルを創業する。ニュージャージ州ベル研ではじまった半導体の歴史はカリフォルニア州シリコンバレーへと引き継がれていく(57
分)。

5.  シリコンバレー ~ハイテク聖地の歴史
情報通信分野のイノベーションの世界的な中心地、シリコンバレーの特徴と歴史を、成功を収めたベンチャー企業(インチュイット、ネットスケープ、アップル、AMDなど)やスタンフォード大学、ベンチャー投資家に焦点を当てながら描き出す。シリコンバレーの特徴は、①起業家の型破りな発想、②それを事業化するための投資システムの完備、③開放的な大学の研究環境、④失敗の反復が成功の原点であるという認識、にある。無数に誕生する起業の地だからこそ、投資資金が得られないといった難題に直面することもあるが、それでも方策はいろいろ残されている。こうして「現代の新ルネッサンスの地」、シリコンバレーは既存の技術や経済の仕組みにとらわれることなく、「フェアチャイルド以降、16~18ヶ月おきに起こる産業革命」を牽引していく(55分)。

6.  パーソナル・コンピュータの誕生と進化 ~Nerdたちの勝利
パーソナル・コンピュータ(PC)が趣味のオモチャから一大産業へと進化していくさまが、そのプロセスに関わったコンピュータ「オタク」(Nerd)と呼ばれる若者たちの姿と様々な企業の盛衰を追いながら描かれる。1970年代半ばに登場したPCは当初、一部のマニアたちを対象とした未熟なオモチャに過ぎなかった。これをビジネスシーンに浸透させたのは、アップルらの新興企業の活躍とPC用に開発されたコンピュータ言語やOS、そして「ビジカルク」といったソフトだった。1981年、巨人IBMがPC市場へ参入したことで、PCは企業の信頼を得、ビジネス文化を大きく変える新産業、新市場を形成していく。後発のIBMは、オープン・アーキテクチャを採用して開発期間を短縮させ、またたく間にPC市場を席巻する。しかし、IBMの思惑に反して、クローンPCの台頭を招いてしまう。さらにGUI技術がPCに採用されることで、PC市場は一般人向けへと広がり、市場はさらなる拡大を続けるが、そこでの勝者は、この技術を開発したゼロックスでも、最初にPCに採用したアップルでも、むろんIBMでもなく、マイクロソフトだった(計152分:Vol.1 51分、Vol.2 50分、Vol.3 51分)。

7.  インターネットの勃興 ~Nerd たちの活躍
1960年代から約40年に及ぶ、インターネットの創世から離陸、爆発的成長までの歴史を、その過程に関わった様々な人々、組織の姿を追いながら描き出す。ソ連との宇宙開発競争から始まったインターネットの歴史は、1960代年から70年代にかけてタイムシェアリングやARPANET計画を通じて、電話線を利用したパケット交換による大型コンピュータのネットワークの構築に向かう。この流れは、ワークステーション、ファイル・サーバー、ルータなどの貢献により、やがてパソコンのネットワーク化につながっていく。そして、1990年代に入ると、 WWW(ワールド・ワイド・ウェブ)、ブラウザ、JAVAの開発により、インターネットはより身近なものになる。インターネットは爆発的な勢いで社会に浸透し、同時にその過程で様々な企業が大きな成功を手に入れていく(計183分:Vol.1 60分、Vol.2 60分、Vol.3 63分)。

8.  オンライン・マネー ~電子決済の興隆
情報通信技術技術の進歩にともなう金融サービスのイノベーションと進化の歴史が、そこに関わった様々な人物や企業、組織の姿をまじえながら描かれる。かつて貨幣、紙幣、小切手など手に触れる有形物であったお金は20世紀に入ってその姿を大きく変えていく。クレジットカード、ATM、先物取引、金融市場、電子決済など、金融サービスをめぐる革新はとどまるところをしらず、国際資本市場は国家の枠組みをはるに超えた巨大な存在として膨張を続けている。そうした流れを牽引し、加速しているのが、率先して金融サービスのイノベーションに挑む一部の銀行、取引所、投資会社、情報サービス会社の先進的な取り組みであり、それを可能にする情報通信技術の進歩である(計115分:Vol.1 57分、Vol.2 58分)。

9.  クールの商人 ~ポップカルチャー・マーケティング革新
アメリカの若者(ティーン)をターゲットにしたビジネスにおいて、若者達が求めるクール(かっこよさ)を企業がどのようにして見つけ出してマネジメントしているのか、その実態とそこに見え隠れする問題が描かれる。3200万人を数えるアメリカの10代の若者は、年間で1500億ドルを使うといわれている。若者向けポップカルチャー・ビジネスで成功をおさめているスプライトとMTVなどを事例としてとりあげながら、とらえどころのなく、不確実で、つかんだと思ったらすぐに逃げていってしまうクールを企業がマネジメントしていくプロセスが具体的に明らかにされている。その一方で、ティーンにスポットをあてた際限のない企業行動が激しさをますがゆえにアメリカ文化の水準が低下し、暴力とセックスが助長されるという社会問題や懸念も浮かび上がっていく(54分)。


■MOTV2「イノベーションの世紀:技術と社会」シリーズ

10.  電気の時代の到来 ~エジソンの天才と苦悩
人々の生活を一変させたエジソンの大発明-電球と電力システム-の開発と普及のプロセス、および、エジソンの直流電力システムが新技術(交流電力システム)に代替されていくプロセスが描かれている。エジソンは、それまで不可能と言われていた実用的な電灯の発明を成し遂げ、さらに、各家庭に電球を灯すための一連の電力供給システムを開発し、社会に普及させていった。エジソンは電球および電気システムの開発にわずか6週間という期限をきったが、実際には、その目標をはるかに上回る長い年月が費やされた。開発に成功したシステムの実地試験は成功裏に終わったものの、社会的な普及には予想より時間がかかった。人々の電気の安全性に対する不安などが普及を阻害したためだ。大々的な宣伝活動で不安の払拭に成功すると、エジソンのシステムは社会に受容されていく。だが、この成功は、他方で新規参入を促した。特に、ウェスティングハウスの交流型電力システムは、エジソンのシステムよりも優れていた。エジソンは交流システムについて過剰ともいえる攻撃をしかけたが、結局は自らの評判を落としただけで終わった。やがて、エジソンの直流システムは交流システムに代替されていく(57分)。

11.  ピル ~経口避妊薬誕生への闘い
アメリカ社会で経口避妊薬ピルが開発され、普及していくプロセスとピルのもたらした社会への影響を描いている。多数の子供を抱えて女性たちが貧困にあえいでいる状況をみてきたサンガーは、産児制限を求めて戦っていたが、その成果は限られたものだった。当時の社会は、女性が男性にコンドームの使用を求めることも、性行為について口にすることも憚れる時代で、女性はただ受身の立場で妊娠を繰り返すだけだった。彼女は避妊薬を求めて、学会から冷遇されていた生殖生理学者ピンガスにその開発を依頼、さらに、かつて女性参政権運動の同志だったマコーミックから資金提供の協力を取り付けた。研究に着手したピンガスは、プロゲステロンに排卵抑制の効果があることを立証し、当時同じ効用を見出してピルを開発したものの用途を見出せなかったGDサールからサンプルを取得した。小規模臨床実験にむけてカトリック信者であり不妊症専門医のロックを巻き込み、さらに、食品医薬品局の認可を取り付けるためプエルトリコで大規模臨床実験を行った。結果は100%に近い避妊を実現できるものの、副作用のため実用化には耐えられないというものだった。ロックやピンガスはそれを無視、GDサールが避妊薬ではなく生理不順治療薬として発売に踏み切ると、情報がもれたこともあってあっという間に女性への投与が進む。やがて食品医薬品局の認可が下りると、ピルは黒人女性も含めて全国に急速に普及していった。しかし、その副作用が問題になり、社会不安を巻き起こす。上院で開かれた公聴会では、傍聴人として参加していた女性団体からその危険性を知らされていなかったと激しい抗議が行われた。この結果、ピルは改善され、製薬会社には潜在的な危険性について告知する義務が与えられた。カトリック教会は産児制限をするピルに対し受け容れられないとの判断を下したが、ピルは女性を出産・育児から開放し、社会進出を促した。経済的な自立を手にした女性は、自らの権利を社会に対して主張するようになり、医者と患者の関係も変化した(53分)。

12.  遺伝子組み換え食品 ~技術革新の光と影
遺伝子組み換え(GM: Genetically Modified)食品が、安全性を主張する科学者の努力や意義を強調する途上国の訴えにもかかわらず、西側諸国の消費者の反発に合って実用化が進まないいきさつが描かれている。GM技術は1980年の植物における遺伝子組み換えメカニズムの発見とそれに続く多くの応用研究によって、1990年後半にやっと農業分野での実用化にまでこぎつける。その間、安全性に対する客観的なデータは積み重ねられ、多くの機関の検査にもパスした。GM技術は、害虫や雑草といった問題に悩んでいる西側諸国の農業従事者はもとより、農業の低生産性と低栄養価による食糧不足と栄養失調という深刻な問題を抱えている第三世界で特に期待が高かった。しかし、GM技術の実用化が始まった頃、西側諸国の富裕層を中心にGM食品の安全性に対して不安が起こり、それが大きな反対運動に展開していく。反対運動は、科学的なデータ(根拠)に基づくものではなく、むしろ直感・感情・イデオロギーの影響が色濃いものだったが、GM技術の利用や開発投資をめぐる企業行動を左右するようになった。こうして、GM食品はその科学的安全性が証明され、恩恵を十分に期待されながらも、実用化には結びつかずに、市場から消えつつある。(79分)。

13.  国際メディア帝国 ~マードック一族の野望
ルパート・マードックが父から受け継いだオーストラリアのメディア事業を、エンターテイメントの世界を含めて国際的なメディア帝国へと拡大していったプロセス、および、帝国を子供たちに引き継がせたいというルパートの願望とその現実が描かれている。ルパート・マードックは、ロンドン留学中に父キースが急逝し、「アデレート・ニュース」の経営を受け継いだ。彼はこの地方紙をベースに、低俗なタブロイド紙から高級なオーストラリア全国紙まで手がける一方で、テレビ局買収などメディア事業を拡大した。1968年にはロンドンに進出し、タブロイド紙で稼ぐと、続いてその資金をベースに、1970年代にはニューヨーク(NY)進出を図る。NYでは当時赤字だった「ニューヨーク・ポスト」と「ニューヨーク・マガジン」を買収し、1985年にNYの市民権を取得すると、念願だったテレビチャンネルや「21世紀フォックス」の買収に乗り出し、エンターテイメントの世界にまで帝国を拡大する。ルパートも、その子供たちも、マードック家では競争が奨励され、幼いときからメディア・ビジネスについての考え方を父から教えられた。ルパートは父から受け継いだ事業帝国を子供たちに託したいと望んでいるが、すでに同家の出資比率は30%程度と低く、高齢のルパートが他界すれば求心力を失って同族経営の維持は難しくなることが予想されている(57分)。

MOTビジネスケース・MOTビデオシリーズ 貸し出しについて

MOTビジネスケース・MOTビデオシリーズ 貸し出しについて

■貸し出しについて(MOTビデオケース)

 MOTビデオケースの貸し出し規定は以下のとおりです。対応するケースのテキストは、お手数ですが一橋ビジネスレビューオンデマンド(http://www.bookpark.ne.jp/hbr/index.asp)からご購入ください。
また、教育者・研究者の方向けにはアカデミック・ディスカウントがあります。

・ 貸し出し期間 1ヶ月
・ 貸し出し形態 (1)MOTビジネスケースの1~16全巻はVHSビデオのみです。
         (2)MOTビデオケースの1~7はDVDです。
・ 費用 無料
   ただし、送料はご負担いただきます。受取人払いでお送りします。
   利用後は、送料ご負担の上、ご返送ください。
・ 申し込み方法
   以下のEメールアドレスにメールにてお申し込みください。
    一橋大学イノベーション研究センター研究支援室
            Email:chosa☆iir.hit-u.ac.jp  (☆を@に変えてください)  
    〒186-8603 東京都国立市中2-1

・ 利用上の注意
   本ビデオケースは教育目的で開発されたものです。
   有料・無料を問わず、ケースディスカッションの題材としてご利用下さい。
   ただし、ケースディスカッションを伴わない、有料のビデオ上映会はお控え下
   さい。
   本ビデオケースの著作権は全て一橋大学イノベーション研究センターに帰属し
   ます。
   DVDの複製は違法となりますのでお控え下さい。

シリーズの詳細についてはこちらをご覧ください-->MOTシリーズ詳細

MOTビジネスケース・MOTビデオシリーズ


MOT ビジネスケース・MOT ビデオ シリーズ 

■目的 

一橋大学イノベーション研究センターでは、技術経営(MOT)教育のインフラ充実を目的として、MOTに関する企業ケースの開発を進めている。近年、MOTの重要性がさかんに叫ばれ、多くの大学で教育プログラムが立ち上がろうとしているが、日本企業を題材としたMOT向けの教材が十分に用意されているとはいいがたい。イノベーションプロセスを研究対象とする当センターは、MOT教育の本格的な教材を提供することができる数少ない組織の1つであるという認識をもち、これまでケース開発に努めてきた。
 2003年度と2004年度は、テキスト主体とした従来のケースを補完するために、新たにビデオケースの開発を行った。MOT向けのケースの場合、どうしても技術的な詳細に触れざるを得ないことが多い。たとえ技術者であっても、分野が異なれば、テキスト情報だけでは技術的内容を把握することは難しい。そこで、テキスト情報をビデオで補完するという方法をとることとした。また、ビデオを通じて、実際にケースに登場する人々の生の声に触れることができるため、より現実感のある議論ができるという利点もある。

(1)MOTビジネスケース

2003-2004年度は以下のケースを開発した。これらのケースは一橋ビジネスレビューオンデマンドのMOTケースシリーズとして提供されている(http://www.bookpark.ne.jp/hbr/index.asp)。また一部のケースについては、部分的に改訂され『一橋ビジネスレビュー』に掲載されたため、そちらのケースとして販売されている。

1. 富士電機リテイルシステムズ(1):自動販売機―自動販売機業界での成功要因
2. 富士電機リテイルシステムズ(2):自動販売機―新たなる課題への挑戦
3. 富士電機リテイルシステムズ(3):自動販売機―飲料自販機ビジネスの実態
4. 東レ・ダウコーニング・シリコーン:半導体パッケージング用フィルム状シリコーン接着剤の開発
5. 日本開閉器工業:モノづくりから市場創造へ「インテリジェントスイッチ」
6. オリンパス光学工業:デジタルカメラの事業化プロセスと業績V字回復への改革
7. ハウス食品:玉葱催涙因子合成酵素の発見と研究成果の事業化
8. 前田建設工業:バルコニー手摺一体型ソーラー利用集合住宅換気空調システムの商品化
9. 京セラ(改訂版):温度補償型水晶発振器市場における競争逆転
10. 二次電池業界(改訂版):技術変革期における新規企業と既存企業の攻防
11. テルモ(1):組織風土の改革プロセス
12. テルモ(2):カテーテル事業の躍進
13. ヤマハ(1):電子音源に関する技術蓄積
14. ヤマハ(2):携帯電話着信メロディ・ビジネスの技術開発、ビジネスモデル構築
15. 東レ(1):東レ炭素繊維複合材料「トレカ」の技術開発
16. 東レ(2):東レ炭素繊維複合材料「トレカ」の事業戦略
   (以上、2本のケースは東レ経営研究所との共同開発による)

(2)MOTビデオケース

上記ケースの一部については、以下 (1~5)のとおり、補完的なビデオケースを作成した。全てテキスト情報を補完することを目的として作られているため、テキストと一緒に利用されることが望ましい。

1. 富士電機リテイルズシステムズ:自販機事業での成功要因と新たな課題への挑戦(53分)
2. 日本開閉器工業:モノづくりから市場創造へ インテリジェントスイッチの開発と市場開拓
   (15分)
3. 東レ・ダウコーニング・シリコーン:半導体パッケージング用フィルム状シリコーン接着剤の開発   (25分)
4. 東レ:炭素繊維複合材料『トレカ』の技術開発と事業戦略(34分)
5. テルモ:風土改革とカテーテル事業の躍進(54分)

  ※ 以下(6~7)はビデオケース(ティーチング・ノート付)のみです。
     テキスト版は作成しておりません。

6. アンジェスMG株式会社:大学発ベンチャー (32分)


  アンジェスMG株式会社(以下,アンジェスMG)は、大阪大学の森下竜一教授らが中心となり設立されたゲノム創薬企業で、大学発ベンチャーのIPO第一号である。①遺伝子医薬の研究・開発、②新規ベクターの研究・開発、③遺伝子医薬の製造と安全性試験、の3領域を主な事業領域としている。同社の特色の一つは、成長段階に合わせた経営者の入れ替えを進め、創業者企業から、プロフェッショナル・マネージャー企業への成長を図ってきた点である。130億円を調達した東証マザーズ上場(2002年9月)、国内外の大手製薬企業との間での共同開発、販売提携などのアライアンス構築など、事業の立ち上げも急速に進んでいる。

  21世紀の日本は、知識社会に突入し、新しい形の産学連携がますます重要性を増している。『アンジェスMG株式会社:大学発ベンチャー』では、アンジェスMGの創業者である森下竜一取締役、および、現社長である山田英CEO両氏へのインタビューを素材に、高度な知識集約型企業が、どのように大学から企業への技術移転を果たし、資金調達、事業化を成し遂げたか、をテーマに掲げ、アンジェスMGの胎動のプロセス、現在のマネージメント、および、今後の課題に対する考察を深める素材になっている。

  具体的には「不確実性の非常に高い技術開発を主な事業とする企業の技術経営(MOT)には、どのような工夫が求められるのか」、および、「それらの工夫を実践していく際には、どのようなトレードオフに直面するのか」、の2点の学習ポイントに関する教育素材として有効である。

7. 株式会社IRIユビテック:技術融合による企業価値の創造 大企業とベンチャー企業 (34分)

  株式会社IRIユビテック(以下、IRIユビテック)は、1977年創業の電子部品開発会社タウ技研が、2001年に、株式会社インターネット総合研究所(以下、IRI)に買収されて成立した。買収前のタウ技研は、新日鉄の資本参加を受け、液晶プロジェクタ、複写機、両替機等の基幹基板の受託開発・生産を主要事業としていた。このタウ技研が、インターネット関連企業のIRIの傘下入りに伴い、急速に、電子部品関連技術と、インターネット関連技術との融合を進めている。株式市場も、この技術融合を高く評価し、同社の企業価値は、買収から、2005年の上場までの4年間で30倍以上に向上している。

  『株式会社IRIユビテック:技術融合による企業価値の創造 大企業とベンチャー企業』
では、 IRIユビテックの現経営陣である荻野司代表取締役社長、木津修治常務取締役電子機器事業部長、および、藤原洋会長(兼IRI所長)各氏へのインタビューを中心に、大きな企業価値向上の源泉となった技術融合の類型、多様性と、そのマネージメントのポイントについて考察を深める内容となっている。また、新日鉄傘下時代のエピソード等も紹介し、大企業とベンチャー企業とのイノベーションのマネージメントの違いについても興味深い議論を触発する素材となっている。

  具体的な学習ポイントは、「企業価値の向上につながるイノベーションの特徴、および、そのマネージメントには、どのような特徴があるのか」、および、「大企業では、なぜ、上記の各特徴が発揮できないのか」の2点である。

                        * * * * * * * * * *

 本開発にかかった費用の多くは、経済産業省「企業家育成プログラム等導入促進事業」と「技術経営人材育成プログラム事業」に依存しているが、一部、文部科学省「21世紀COE(Center of Excellence)プログラム」からの助けも得ている。ここに感謝の意を表したい。また本事業では委託元の三菱総合研究所の協力も得た。2003年度に関しては森ビル株式会社の協力得た。あらためてお礼を申し上げたい。


■貸し出しについて(MOTビデオケース)

MOTビデオケースの貸し出し規定は以下のとおりです。対応するケースのテキストは、お手数ですが一橋ビジネスレビューオンデマンド(http://www.bookpark.ne.jp/hbr/index.asp)からご購入ください。
教育者・研究者の方向けにはアカデミック・ディスカウントがあります。

・ 貸し出し期間 1ヶ月
・ 貸し出し形態 (1)MOTビジネスケースの1~16全巻はVHSビデオのみです。
         (2)MOTビデオケースの1~7はDVDです。
・ 費用 無料
   ただし、送料はご負担いただきます。受取人払いでお送りします。
   利用後は、送料ご負担の上、ご返送ください。
・ 申し込み方法
   以下のEメールアドレスにメールにてお申し込みください。
    一橋大学イノベーション研究センター研究支援室
            Email:chosa☆iir.hit-u.ac.jp(☆を@に変えてください
    〒186-8603 東京都国立市中2-1

・ 利用上の注意
   本ビデオケースは教育目的で開発されたものです。
   有料・無料を問わず、ケースディスカッションの題材としてご利用下さい。
   ただし、ケースディスカッションを伴わない、有料のビデオ上映会はお控え下
   さい。
   本ビデオケースの著作権は全て一橋大学イノベーション研究センターに帰属し
   ます。
   DVDの複製は違法となりますのでお控え下さい。

MOTVシリーズ概要

概要


■目的
 MOTVとは「Management of Technology Video」の略称で、「技術経営教育向けの映像教材」を意味する。一橋大学イノベーション研究センターと(株)ケンジ・コミュニケーションズは、MOT教育・研修の活性化をはかることを目指して映像教材の開発、供給に取り組んでおり、MOTVはその産物である。

映像教材は学習方法の多様化・高度化を可能にし、学習者の理解を効果的に促進、支援することができる。MOTVの開発・供給を通じて日本のMOT教育の充実に貢献したいというのがわれわれの願いである。

MOTVは二つのシリーズから構成されている。
MOTV1「イノベーションの世紀:アメリカの革新」シリーズ(以下MOTV1)とMOTV2「イノベーションの世紀:技術と社会」シリーズ(以下MOTV2)である。
MOTV1は2003年度に、MOTV2は2004年度に開発したもので、ともに海外(アメリカ、イギリス、オーストラリア)の既存の映像作品を活用している。海外にはすでに質の高いMOT関連の映像作品が
豊富にそろっているが、中でもとくに優れていると思われるものを選定し、それらの作品について日本でMOT教育用に利用できるように版権を取得し、日本語字幕をつけて、シリーズ化した。

両シリーズあわせて、合計13の作品(約19時間分)から成っている。また、これにあわせて、技術経営に関する講義・研修などでそれぞれの作品をどのように利用できるかを示す手引き(ティーチング・ノート)も用意した。

 両シリーズの開発に要した費用は、経済産業省による「起業家育成プログラム等導入促進事業」(MOTV1)と「技術経営人材育成プログラム導入促進事業」
(MOTV2)の支援にその大部分を負っており、同省ならびに同プロジェクトの運営主体である(株)三菱総合研究所に感謝したい(https://www.mot.gr.jp)。

■MOTV1「イノベーションの世紀:アメリカの革新」シリーズ

 本シリーズは、以下の9作品(60分ビデオテープ15本分)から構成される。
第1巻 電話 ~その発明と革新(51分)("The Telephone" Simon & Goodman Picture Company/WGBH、Boston、1997年制作)
第2巻 電波の帝国 ~ラジオを創造した男たち(55分/58分)("Empire of the Air
~The Men Who Made Radio" Florentine Film/WETA、Washington、1991年制作)
第3巻 カメラの鬼才 ~イーストマン・コダック物語(52分)("Wizard of Photography"
Green Light Productions/WGBH、Boston、2000年制作)
第4巻 真空管からトランジスターへ ~半導体産業の誕生と発展(57分)
("Transistorized!" ScienCentral/KTCA、1999年制作)
第5巻 シリコンバレー ~ハイテク聖地の歴史(55分)("Silicon Valley:2001"
Santa Clara Valley Historical Association/OPB、Oregon、2000年制作)
第6巻 パーソナル・コンピュータの誕生と進化 ~Nerdたちの勝利(51分/51分/
51分)("Triumph of The Nerds" RM Associates/ Channel 4 & OPB、Oregon、
1996年制作)
第7巻 インターネットの勃興 ~Nerd たちの活躍(61分/61分/63分)("Nerds
2.0.1. ~A Brief History of the Internet" OPB、Oregon、1998年制作)
第8巻 オンライン・マネー ~電子決済の興隆(57分/58分)("Electric Money" RM Associates/OPB、Oregon、2001年制作)
第9巻 クールの商人 ~ポップカルチャー・マーケティング革新(54分)("Merchants
of Cool" 10-20 Productions/WGBH、 Boston、2001年制作)

 このシリーズでは19世紀後半から20世紀末にかけてのアメリカにおける主要な
イノベーションをとりあげた作品を集めた。電話、ラジオ、カメラ、半導体、コンピュー
タ、インターネット、電子決済など、それぞれのイノベーションがどのような経緯で
実現、発展し、その過程で様々な人々、組織、政府、制度がどのように関わり、また
それぞれのイノベーションが経済、産業、社会、文化などにいかなる影響を及ぼした
のかが、貴重な映像を駆使してわかりやすく描かれている。作品は全てアメリカの
公共放送(PBS: Public Broadcasting Service)に所属する各地のテレビ局や独立
系番組制作者が制作したものである。

■MOTV2「イノベーションの世紀:技術と社会」シリーズ

 本シリーズは、以下の4作品(60分ビデオテープ4本分)から構成される。

第10巻 電気の時代の到来 ~エジソンの天才と苦悩(57分)("Edison's Miracle
of Light" 米国PBS/WGBH, 1995年制作)

第11巻 ピル ~経口避妊薬誕生への闘い(53分)("The Pill" 米国PBS/WGBH,
2002年制作)

第12巻 遺伝子組み換え食品 ~技術革新の光と影(79分)("The Rise and Fall
of GM" 英国Channel Four Television Corporation, 2000年制作)

第13巻 国際メディア帝国 ~マードック一族の野望(57分)("The Murdochs:
Building an Empire" オーストラリアABC, 2002年制作)

 このシリーズでは技術革新と社会の関係についてとりあげた作品を集めた。電力ネットワーク、経口避妊薬、遺伝子組み換え食品、国際メディアなど、社会に大きなインパクトをもたらすイノベーションが巻き起こす様々な社会的な問題がとりあげられ、それぞれのイノベーションが実現(あるいは挫折)していく過程が、貴重な映像を駆使してわかりやすく描かれている。アメリカ(第10、11巻)、イギリス(第12巻)、オーストラリア(第13巻)のテレビ局が制作した作品である。

■MOTVのねらいと特徴

 MOTVは、技術経営教育用の教材として開発されているが、とくに重要な狙いが二つある。
ひとつは、イノベーションが社会的なプロセスであることを理解してもらうことにある。狭義の技術革新はたしかにイノベーションの必要条件にはなるが、イノベーションが社会で受容され、普及するためには技術革新だけでははなしはすまない。とりわけ、MOTVでとり上げるような大がかりなイノベーションでは、社会に対する主体的な働きかけが重要であり、時には強大な抵抗にあってせっかくの技術革新が花開かぬまま頓挫する場合もある。社会的な営みとしてのイノベーションの特質を理解すること、これが第一の狙いである。

 もうひとつ、イノベーションとそれを担う企業の命運の関係を理解することもMOTVの狙いである。イノベーションで先行して大きな成功を手に入れるのも、またその結果主役の座を奪われるのも企業である。あるいはイノベーションに成功した企業が最終的な経営の果実をえるとは限らない。イノベーションと企業の盛衰の関係は複雑である。この複雑な関係を、欧米の企業が取り組んだ様々なイノベーションを題材に解き明かし、技術経営の手がかりを提供すること、これが第二の狙いである。

 類似の映像作品としてNHKが放映している「プロジェクトX」を思い浮かべる人もいるだろう。社会に重要なインパクトを残した技術革新を扱っているという点でたしかに共通する部分がある。ただ、プロジェクトXは、多くの場合、特定の組織、チーム、リーダーによる特定のプロジェクトの成功に至るまでの苦闘を扱っている。

まさに「プロジェクト」の話しである。これに対して、MOTVでは、様々な人々、組織、さらには政策や制度などがからみ、時にはみにくい争いや政治的かけひき、さらには宗教的葛藤、イデオロギーの対立なども繰り広げながら、電話、電力ネットワーク、ラジオ放送、カメラ、半導体、クレジットカード、経口避妊薬、ATM、パソコン、国際的メディア、インターネットなどそれまで存在しなかった新しい産業、ビジネス、仕組みが生まれ、そして発展していった過程を追う作品が集まっている。より「構え」の大きな内容となっており、社会的プロセスとしてのイノベーションという現象を理解する上
で、格好の内容となっている。

 われわれの知りうる限り、これらの一連の作品をひとまとめにしてとりそろえたシリーズは、多くの優れた作品を生み出しているアメリカにもない。個々の作品が必ずしも意図していたわけではないが、一連の作品群を通してみることによって、結果として19世紀後半から20世紀末にかけてのアメリカにおける様々なイノベーションのつながりや共通点を見つけたり、それとは逆に時代にともなう変化を見いだしたりすることができる。宗教・社会の抵抗を乗り越えて社会に普及・定着していった
経口避妊薬の話しと、イデオロギーの抵抗を乗り越えることができぬまま消滅の危機にある遺伝子組み換え食品の話しを対比してみることも可能である。「個々の作品の利用」もさることながら、こうした「作品集としての利用」が可能になっているのもMOTVの大きな魅力である。

 いまや技術水準で世界の先頭に立った日本は、新たな産業、事業分野を生み出すようなイノベーションをみずから創造することが求められている。そんな日本にとって、これまで大がかりなイノベーションにおいて数多くの実績をあげてきた欧米の歴史から学ぶことができるMOTVは、貴重な教材となるはずだ。いろいろな機会、場面で使っていただければ幸いである。