2015年3月19日、シンポジューム『医薬バイオ産業イノベーション: 革新力強化への課題 JSTプロジェクトからの示唆』が一橋講堂中会議室1, 2 にて開催されました。
本シンポジュームの目的は, 平成23年11月より平成27年3月まで行われたJST/RISTEX 研究開発プロジェクト『イノベーションの科学的源泉とその経済効果』における知見を広く社会に対し明らかにすることで、産業政策および科学技術政策によるライフサイエンス産業の振興策、ひいてはイノベーション創出の在り方を検討することです。そのため、本シンポジュームでは以下の4つのセッションが行われ、それぞれ活発な議論が行われました。
(左から) 長岡IIR教授, 一橋大学経済学研究科岡室教授、
学習院大学西村准教授、経済産業研究所山内研究員
第1セッション:
イノベーションの科学的な源泉と知識の波及効果:知識フローの把握 では、特許や論文の書誌情報やサーベイ調査を用いたイノベーションプロセスの測定手法について、原IIR特任助手、山内研究員、西村准教授が報告を行いました。
「革新的医薬の科学的な源泉とその波及効果の把握:事例研究から」原 IIR特任助手
“The use of science for inventions and its disclosure: patent level evidence matched with survey”山内 研究員
「イノベーションの科学的な源泉と知識の波及効果:知識フローの把握へのコメント」文部科学省科学技術・学術政策研究所伊神正貫主任研究員
第2セッション:
バイオスタートアップの科学的源泉とファイナンス では、バイオスタートアップの課題について神戸大学大学院経済学研究科中村准教授、中央大学商学部本庄教授両名が報告を行い、経済産業省新規産業室石井氏、日本大学経済学部准教授宮川氏が研究発表に対するコメントを行いました。
(左から) 清水由美バイオインダストリー協会事業連携推進部 主任, 石井芳明経済産業省 新規産業室,新規事業調整官 本庄裕司中央大学商学部 教授, 中村健太神戸大学大学院経済学研究科准教授
第3セッション: サイエンスと革新的医薬の探索と開発:日本の革新的な医薬の事例研究からの示唆 では、日本で研究開発が行われた革新的医薬の事例研究について長岡IIR 教授, 神戸大中村准教授および元バイオインダストリー協会河部副部長が科学的源泉の役割および知的財産の役割に係る報告をそれぞれ行いました。
これを受け、日本の革新的医薬の研究開発プロセスにおいて重要な役割を果たした三名の開発者からコメントをいただきました。
(左から) 遠藤章東京農工大学 特別栄誉教授一橋大学イノベーション研究センター 客員教授/井村良視武田薬品工業株式会社医薬研究本部リサーチマネジャー/大杉義征一橋大学イノベーション研究センター特任教授
遠藤章東京農工大学 特別栄誉教授/一橋大学イノベーション研究センター 客員教授による「スタチンの開発から学んだこと」、井村良視武田薬品工業株式会社医薬研究本部リサーチマネジャーによる「アンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB)の発見とブロプレスの開発」、大杉義征一橋大学イノベーション研究センター特任教授による「アクテムラの経験とコメント『日本発(初)の抗体医薬品』~不確実性、産学連携、競争~ 」と題し、それぞれの医薬品開発における経験談、今後のライフサイエンス産業への示唆など多くの示唆に富む意見を伺うことができました。
遠藤章東京農工大学 特別栄誉教授一橋大学イノベーション研究センター 客員教授 (一番左)
井村良視武田薬品工業株式会社医薬研究本部リサーチマネジャー(左)/大杉義征一橋大学イノベーション研究センター特任教授(右)
第4セッション 新薬開発におけるサイエンスと先行優位性、不確実性、及び規制:
医薬品探索開発プロジェクトの大規模サーベイからの示唆 では、本研究プロジェクトにおいて実施した医薬品サーベイ調査について、長岡IIR教授および学習院西村准教授が報告を行いました。また、報告に対し産業界での課題について日本製薬工業協会研究開発委員会産学官連携部会長川上善之氏が、政策的な課題について河野典厚厚生労働省医政局 治験推進室長がコメントを行いました。
源田浩一日本製薬工業協会医薬産業政策研究所元主任研究員 (左)/河野典厚厚生労働省医政局治験推進室長 (右)
川上 善之日本製薬工業協会研究開発委員会産学官連携部会長
最終セッションでは、これまでの研究報告および議論を踏まえ、科学技術政策および知的財産制度の観点から、赤池伸一科学技術・学術政策局企画評価課分析官および岡田吉美一橋大学イノベーション研究センター教授からそれぞれコメントをいただきました。
赤池分析官によるコメント「科学技術イノベーション政策の立場から」
岡田教授によるコメント「知的財産制度の立場から」
当日は50名を越える参加者にお越しいただき、盛況の中会を終えることができました。本シンポジュームの開催に際しご協力いただきました科学技術振興機構社会技術研究開発センター、日本製薬工業協会医薬産業政策研究所およびバイオインダストリー協会の皆様には厚く御礼申し上げます。
本研究開発プロジェクトの研究開発期間は本月で終了しますが、本プロジェクトを通じ得られた知見の数々は今後ワーキングペーパー、学術論文、学会報告、書籍等を通じ明らかにしていく予定です。
(文責・原)