2017年5月29日月曜日

【設立20年をむかえて】


イノベーション研究センター(イノ研, IIR)が設立されて20年。今や、「イノベーション」は市民権を得て、企業や政府の将来戦略を語る上では欠かせないキーワードとなりました。しかし20年前はイノベーションという言葉の意味さえ十分に理解されていませんでした。日本では、イノベーションを技術革新と訳すことが多く、技術系の世界の話であると思われていました。「社会科学でなぜイノベーションなのか」、「技術革新ではだめなのか」、「なぜカタカナを使うのか」等々、センターの立ち上げに際しては様々な質問を受けたことを記憶しています。

イノベーションとは、過去からの連続線上にはない革新のことを指しますが、それは技術革新に限らず、組織や制度など様々な革新を含む概念です。また、イノベーションは単なる発明ではなく、革新的アイデアを具体化し、社会に価値をもたらしてはじめて実現するもので、その過程には多くの人々や組織が関与します。

それゆえ、社会科学の大学である一橋大学にイノ研が設立されたことは必然ともいえるのですが、20年前には、それが広くは理解されず、その設立自体が、困難をともなうイノベーションであったように思います。それが今ではあらゆる局面でイノベーションの重要性が叫ばれるようになり(少々安易に叫ばれることもありますが)、われわれがその先駆的な役割の一端を担うことができたことには多少の自負とともに喜びを感じます。

イノ研自体は20周年となりますが、その前身である一橋大学産業経営研究所(産研)と東京商科大学産業能率研究所の時代を含めると、70年以上の歴史があります。産研の時代から、われわれの研究所は現実と真摯に向き合う実証的な学問を指向してきました。その1つが、80年代に野中先生を中心に行われた日本の製造企業の競争力研究でした。低賃金と安い通貨を背景に安価で高品質の製品を製造する能力に注目した従来の研究に対して、新製品やイノベーションを次々生み出す組織力に日本企業の強さの源泉を見いだした研究が世界に発信されました。それは90年代に入り知識創造理論としての発展を遂げます。また80年代には、情報技術や組織のネットワーク化の流れをいち早く捉えた今井先生の先駆的な研究も発表されました。

これらに代表されるような、現実社会の先進的な動きを捉えた研究の蓄積が、その後、イノベーションというキーワードに収斂し、イノ研の設立に至ったのだと理解しています。

今思えば、イノ研の設立は社会の要求に対する自然な回答であり、日本においては一定の役割を果たしてきたとは思います。しかし、この20年間の日本経済の低迷ぶりを真摯に受け止めるならば、われわれの貢献が必ずしも十分ではなかったことは認めざるをえません。この20年間、電子技術や情報通信技術の急発展によって社会は大きく変化しました。その変化を、実務家のみならず、われわれ研究者も十分に捉えきれなかったのかもしれません。

その反省はもちろん必要ですが、立ち止まっている暇はありません。目の前で進みつつある次世代イノベーションの本質を理解し、それを前進させるための方策を探求することに、着手しなければなりません。そのためには、研究にも新たな視点からのアプローチが必要になるでしょう。専任教員の中で20年前の設立メンバーは私一人になりました。イノ研は若い研究者を中心とした新しい体制に移行し、イノベーティブな研究を生み出す好環境が生まれつつあります。

20年前にイノ研の設立という形で結実したイノベーションを引き継ぎ、次の20年に向けた新たな研究イノベーションを実現することが、今のわれわれの使命だと考えています。

期待してください。

2017年5月28日
一橋大学イノベーション研究センター
青島矢一

【イノベーションフォーラム】2017.6.8 余江

イノベーションフォーラムのお知らせ 2017年6月8日

論題: 
"China's Information Infrastructure and Innovation Efforts under the Globalization"

講演者: 
余江(中国科学院, 教授)

日時:
2017年6月8日(木) 14:10~14:50

開催場所:
一橋大学第二研究館 6階601室

幹事:
カン ビョンウ(イノベーション研究センター)

2017年5月19日金曜日

【イノベーションフォーラム】2017.7.26加藤雅俊

イノベーションフォーラムのお知らせ 2017年7月26日

論題: 
"Family Employees and Innovation Behavior of Start-ups: A Family Embeddedness Perspective of Entrepreneurship (with Haibo Zhou)"

講演者: 
加藤雅俊 (関西学院大学経済学部, 准教授)

日時:
2017年7月26日(水) 12:15~13:40
 (昼食持ち込み可)

開催場所:
一橋大学第二研究館 6階601室

幹事:
清水 洋(イノベーション研究センター)

2017年5月11日木曜日

フォーラム 2017年度

これまでのフォーラム一覧 2017年度

イノベーション研究に関する研究会を、他大学の研究者、企業人、官界人らを交えて、月1回のペースで行なっています。

2018.2.14
Tuukka Toivonen
(PhD. Senior Lecturer at the Institute for Global Prosperity (IGP), University College London)
”From Creative 'Clashes' and 'Sparks' to Jolts: An empirical investigation of the idea journeys and feedback interactions of early-stage digital entrepreneurs in London”

2018.1.31
Lee, Sang-Gun
(Professor, Sogang University Business School)
”A Comparative Study of Linkage of Effects of ICT Industries and Machinery and Equipment Industries among the Korea, the United States, Germany and Japan”

2018.1.24
Cornelia Lawson
(Prize Fellow, University of Bath)
"Citizens of Somewhere: Examining the Geography of Foreign and Native-born Academics’ Engagement with External Actors"

2017.12.27
清水たくみ
(Ph.D Candidate, Desautels Faculty of Management, McGill University)
"Coordinating collective framing processes with heterogeneous
 actors in technology standard development: A Topic Modeling Approach"

2017.12.6
Ravi Madhavan
(Professor, The Joseph M. Katz Graduate School of Business, University of Pittsburgh)
”The Evolution of Systems Integration Capability in China: Case Studies in Nuclear Power and Commercial Aircraft”

2017.10.25
Evan W. Lauteria
(PhD Student, University of California Davis)
"The Cultural Foundations of Institutional Divergence: A Study of Nintendo and SEGA’s ‘Console Wars'"

2017.7.26
加藤雅俊 (関西学院大学経済学部, 准教授)
"Family Employees and Innovation Behavior of Start-ups: A Family Embeddedness Perspective of Entrepreneurship (with Haibo Zhou)"

2017.6.8
余江(中国科学院, 教授)
"China's Information Infrastructure and Innovation Efforts under the Globalization"

2017.5.31
Jean-Baptiste Marc Litrico
(Associate Professor, Smith School of Business, Queen's University/
Visiting Associate Professor, IIR, Hitotsubashi University)
"Industry Ethos and Corporate Response to Institutional Pressures: Naturalizing Sustainability in Aviation"



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【イノベーションフォーラム】2017.5.31 Jean-Baptiste Marc Litrico

イノベーションフォーラムのお知らせ 2017年5月31日

論題: 
"Industry Ethos and Corporate Response to Institutional Pressures: Naturalizing Sustainability in Aviation(仮)"

講演者 :
Jean-Baptiste Marc Litrico
(Associate Professor, Smith School of Business, Queen's University/
Visiting Associate Professor, IIR, Hitotsubashi University)

言語:英語

日時:
2017年5月31日(水) 12:40~14:30

開催場所:
一橋大学第二研究館 6階601室

幹事:
軽部 大(イノベーション研究センター)

2017年5月9日火曜日

【おしらせ】IIRサマースクール2017

一橋大学イノベーション研究センターでは、8月23日・24日の二日間にわたり、IIRサマースクール2017を開催いたします。
当サマースクールは盛会のうちに終了しました。
御参加下さいました皆様、ありがとうございました。

2017年のプログラムは下記の通りです。
(IIRサマースクール2017-プログラム
 http://hitotsubashiiir.blogspot.jp/2017/08/iir2017.html

イノベーションが大きな注目を集めるいま、国内外で研究の裾野は大きく広がっています。IIRサマースクールは、研究者のネットワーキングと最新の研究発表の場、若手研究者へのサポートを通じて、イノベーション研究をさらに促進することを目的としています。

■日時:2017年8月23日(水)・24日(木)

■場所:一橋大学佐野書院(東京都国立市中2-17-35)

■参加対象者:大学院でイノベーション研究を考えている学部生(3・4年生)・大学院生(修士・博士)・アーリーキャリアの研究者・シニアの研究者(ただしYoung at Heart!)

以下の通り、募集いたします。ご応募をお待ちしております。

1)イノベーションに関する理論あるいは実証研究の発表者
締切日:2017年7月5日(水)

応募方法:
A4で2枚程度に、(1)ご氏名、(2)ご所属、(3)職位または学年、(4)発表タイトル、(5)概要、(6)日本語セッションと英語セッションのいずれを希望されるかをまとめていただき、Eメールにて下記宛てにご提出ください。

送り先:一橋大学イノベーション研究センター研究支援室
(担当:小貫 onuki★iir.hit-u.ac.jp、★を@に変えて送信して下さい)

※審査結果は、7月12日までにお知らせいたします。
※研究発表をされる方には宿泊費と交通費を支給します(ただし、自宅から通える場合を除く)。
※優れた研究発表には『一橋ビジネスレビュー』での発表にむけてエディターがコミットします。

2)オーディエンスとしての参加

参加受付けを締め切りました。






IIRサマースクール2017 オーディエンス申込み

オーディエンスのお申し込みはこちらのフォームからお願いいたします。

現在の研究テーマの日本語・英語でのご記入が必須となっております。
ご準備の上、ご記入ください。

携帯等はこちらから入力下さい

*(一橋大学の夏季休業期間は8月11日~16日となっております。
この期間はお申込み受付のメールがお送りできませんのでご了承ください)


2017年5月1日月曜日

研究者プロフィール 谷口 諒

谷口 諒(タニグチ リョウ) 特任助教
専門:組織論
生まれ年:1989年
E-mail:taniguchi☆iir.hit-u.ac.jp (☆を@に変えてください)
Phone:042-580-8434
Fax: 042-580-8410

【履歴】
2012年 一橋大学商学部卒業
2014年 一橋大学大学院商学研究科修士課程修了 修士(商学)
2017年 一橋大学大学院商学研究科博士後期課程修了 博士(商学)
2017年~ 一橋大学イノベーション研究センター 特任助教

【受賞】
2018年 論文『シンボルを用いた資源獲得の成功による資源配分の失敗:「バイオマス・ニッポン総合戦略」の事例』により、第34回「組織学会高宮賞(論文部門)」を受賞

【最近取り組んでいるテーマ】
組織横断型プロジェクトの成立と暴走
技術ブームの誕生と終焉



【論文一覧】   リンクはこちら

研究者プロフィール 朝野 賢司

朝野 賢司(アサノ ケンジ) 特任講師
専門:再生可能エネルギー政策分析、環境経済学
1974年生

E-mail: asano☆iir.hit-u.ac.jp (☆を@に変えてください)
Phone: 042-580-8411
Fax: 042-580-8410

【履歴】
2006年3月 京都大学大学院地球環境学舎「地球環境学」博士号取得
2006年4月 (独)産業技術総合研究所バイオマス研究センター特別研究員
2007年7月~現在 (一財)電力中央研究所社会経済研究所 入所
2015年4月~現在 一橋大学イノベーション研究センター 特任講師

【最近取り組んでいるテーマ】
エビデンスに基づく政策形成・制度設計過程の分析
特に再生可能エネルギー政策の評価と分析


【論文一覧】   リンクはこちら